【エッセイ】夏休み中の読書推進――英国の図書館の取り組み|中野百合子さん

夏休み中の読書推進――英国の図書館の取り組み
中野百合子さん
私が勤務するロンドンの公共図書館では目下、毎年恒例の「サマー・リーディング・チャレンジ」の準備に追われています。夏休み中の子どもたちに読書の継続を呼び掛けるこのキャンペーンは、以前からそれぞれの自治体の手作りで行われていたようですが、1999年以来、読書推進のチャリティー団体であるThe Reading Agency(リーディング・エージェンシー)がパッケージとして公共図書館に売るようになり、全国の公共図書館でほぼ共通のキャンペーンが行われるようになりました。
キャンペーンは4歳から11歳の子どもが対象で、7月、8月の約二ヶ月にわたって行われます。キャンペーンが始まると、子どもたちは図書館に来てチャレンジに参加します。図書館のスタッフは、一人一人の子どもたちに、シールを貼っていく台紙と、読んだ本を記録するカードを作ります。1冊読むごとに、スタッフに読んだ本について話をし、シールを台紙に貼っていき、しおりや折り紙、鉛筆など、ちょっとしたプレゼントをもらいます。目標とする読書冊数はそれぞれの子どもが決めていいことになっていますが、図書館では6冊読むことを勧めています。そして、期間中に6冊読むことができた子どもたちは、秋に行われるセレモニーに招待され、賞状とメダルを受け取って、チャレンジは完了となります。
リーディング・エージェンシーが用意するパッケージには、ポスター、台紙、シールに加え、各年ごとに変わるテーマに合わせた本のリストが含まれます。ただし、このリストに載っている本に限らず、好きな本を読んでよいことになっているので、ここは司書の腕の見せ所で、テーマに沿って自分たちが薦めたいと思う本も展示します。私の図書館では、今年のテーマであるStory Gardenに合わせて「児童室全体を大きな庭みたいにして、チャレンジを盛り上げたい!」と張り切る読書推進部長の下、工作が得意な職員が中心となって児童室の装飾のデザインを考え、飾りにする紙の花を作り始めました。今月は、児童室に来る子どもやその親たちも一緒になって、紙の花作りを手伝ってくれています。同時に私は、リスト以外の本で展示したい本のリストを作ったり、キャンペーン中に毎週行われる予定のイベントを企画したりと、スタッフ一丸となってキャンペーンの準備に取り組んでいます。
またこのチャレンジは、若い人たちがボランティアをする機会ともなっています。14歳以上が対象で、自分自身が以前楽しんだチャレンジを、今度はスタッフの側となって手伝います。図書館にとっては、近隣の小学校に出向いてキャンペーンへの参加を呼びかけ、また、中高生にボランティアとして参加を呼びかけることで、地元の学校とのつながりを深めるチャンスでもあります。
サマー・リーディング・チャレンジが、一人でも多くの子どもたちが図書館に足を運ぶ機会となるように、また、大好きな本を見つけ、読書の喜びを味わうきっかけとなるように、楽しいキャンペーンにしたいと張り切っています。

中野百合子(なかのゆりこ) 玉川大学文学部外国語学科ドイツ語専攻卒業。英国シェフィールド大学大学院にて図書館学修士課程修了。2003年度の(公財)東京子ども図書館・第二期研修生を経て、都内の小学校図書館、公共図書館に勤務。2011年よりイギリス在住。ロンドン市内の公共図書館に勤務。
学校図書館関係者の皆さまへ
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2025.07.11






