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守れロズ! 故郷を、大切な仲間たちを! 『守れ 野生のロボット』

『守れ 野生のロボット』
漂着した孤島で怪物よばわりされていたロボットのロズが、自然の中で動物たちと接するうちに家族ができ、人間よりも人間的なロボットに変わっていく、第一作『野生のロボット』。ロボット工場で修理されたロズが、農場で働くロボットとして人間社会に送り込まれ、ついには故郷の島に逃亡していく、第二作『帰れ 野生のロボット』。
そして、シリーズ第三作『守れ 野生のロボット』が刊行になり、物語はクライマックスを迎えます。

故郷の島に帰り、おだやかな時間を過ごしていたロズ。息子、ガンのキラリもパートナーを見つけるほど大きく成長しましたが、ある日、島の海岸に傷ついたアザラシが漂着し、「毒潮」が島にやってきていることを知らされます。アザラシのいうとおり、まもなく島はひどい環境汚染にさらされ、たくさんの動物たちが苦しむことになりますが、そんななか、沼に落ちたロズは、第二作(『帰れ 野生のロボット』)で修理をうけた自分の身体が防水機能を備えていることに気づきます。

毒潮とは何? 故郷と仲間を守るため、ロズはまたもや立ち上がります。ひとり、毒潮が流れてくる北に向かって海中をひたすら進むロズ。たくさんの海洋生物たちに導かれながら、ツンドラをわたり、氷河を超え、そうしてついに、海の全生物を従える「古代ザメ」がいる北の果ての海にたどり着きますが……。


 

なんとそこには、ジャガーノートというレアメタルの海底採掘基地が存在したのでした。しかも、このレアメタルは、ロボットを作るのになくてはならない原料だったのです……。


「海洋生物軍」をひきいて人間と戦おうとする古代ザメ。基地の責任者アキコ・フジイとの話し合いで平和的に解決したいロズ。ロズは仲間たち、故郷、そして海を救うことができるのでしょうか?

現代社会がかかえる深刻な環境問題に、あきらめることなく懸命に立ち向かうロズの姿。一方、全作通して描かれる、森や湖、沼や小川、海辺や海底に暮らす動物の仲間たち……。どんな場面でも登場人物は飄々と楽しげに描かれていて、この作品には、決して悪者がいないことに気づきます。

この壮大な物語を著者はキャンピングカーに乗り込み、大自然の中でひとり仕上げていったそうですが、自然はいつも著者にやさしく語りかけていたに違いありません。

ロズの体は、ロボット設計士モロボ博士によって水陸両用に改良されていきましたが、ロズの思考回路・行動部分についても、良いウソはつけるようになっていたり、理由があれば戦うこともできるように改良されていました。これはロボットとしては規格外の欠陥になってしまうわけですが、きっと、モロボ博士が、「我が子」ロズのために、祈りを込めて人間的な個性、心を授けたのではないでしょうか。

「ロボットとは何か」、そして「人間とは何か」をあらためて考えさせてくれる、壮大な未来の物語「野生のロボット」シリーズです。

作・絵/ピーター・ブラウン 
作家・イラストレーター。アメリカのニュージャージー州で育つ。アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン卒業。絵本に『トラさんあばれる』(光村教育図書)、『ふしぎなガーデン 知りたがりやの少年と庭』(ブロンズ新社、2014年ボストングローブ・ホーンブック賞大賞)、イラストを担当した絵本に『きょうふのおばけにんじん』(2013年コルデコット賞オナーブック)『きょうふのおばけパンツ』(共に学研プラス)などがある。ニューヨーク在住。

訳/前沢明枝
翻訳家。ウェスタンミシガン大学で英米児童文学、ミシガン大学大学院で言語学を学ぶ。訳書に『家出の日』(徳間書店、産経児童出版文化賞推薦)、『アメリカ児童文学の歴史ー300年の出版文化史』(監訳、原書房)、『野生のロボット』(福音館書店」)など。著書に『「エルマーのぼうけん」をかいた女性ルース・S・ガネット』(福音館書店)がある。
 

2025.07.18

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