奇想天外&大爆笑! アメリカの古典絵本『おさるとぼうしうり』

『おさるとぼうしうり』
1970年に翻訳出版されて以来、半世紀以上も読み継がれてきた、ちょっと奇想天外なアメリカの古典絵本が『おさるとぼうしうり』です。
舞台は、白い壁、赤い屋根の家が連なる郊外の小さな町。
そこに、ひとりの蝶ネクタイの男が、帽子売りにやってきます。品物はかつぐのではなく、はじめに、自分の格子縞の帽子をかぶり、その上にねずみ色の帽子をのせ、その上に茶色の帽子をのせ、その上に空色の帽子をのせ、いちばんてっぺんに赤い帽子をのせて売り歩きます。
(ちょっと変わった売り方ですね。)

なにしろ、売り物の帽子を頭の上に16個も重ねてのせているのですから、落とすとたいへんです。ですから、背筋はいつもしゃんと伸ばさなくてはなりません。
ある日、おなかをすかせた帽子売りが、ゆっくりゆっくり歩きながら町を出ていくと、一本の大きな木がありました。
そこで、つかれた帽子売りは腰をおろし、しだいに眠ってしまいます。

すると……、頭の上の帽子がないのです。
右を見ても、左を見ても、うしろを見ても、木のうしろを見ても。
そうして最後に上を見上げてみると、なんとたくさんのおさるが、帽子をかぶっていたのでした。

帽子売りはなんとかして、おさるから帽子を取り戻そうとしますが、なにをいっても、怒鳴っても、おさるたちは足を踏み鳴らしながら「ツー、ツー、ツー」というばかり……。
しまいには、腹が立ってどうしようもなくなった帽子売りは、自分がかぶっていた帽子を地面になげつけますが、それを見たおさるたちは……??
どこかにありそうでなさそうで、なさそうでありそうな不思議な町には、なぜか人間の気配が感じられません。帽子売りも同じ。チャップリンのように蝶ネクタイをして髭をはやした無表情の帽子売りの男からは、これから何が起こるのか、妙な空気が漂ってきます。
それに比べて、郊外の木の上にいるおさるたちのかわいいこと、かわいいこと。人間的!?なおさるの仕草には、なにかほっこりさせてくれる安心感があります。
このアンバランスな緊張感があるからこそ、最後の大どんでん返しに大爆笑してしまうのでしょう。
同じような物語が世界の昔話にもあるようですが、この絵本は昔話そのものかもしれません。文と絵が見事に重なり合い、場面展開にも無駄がない、絵本の傑作です。
2025.08.09
