日々の絵本と読みもの

身近なのに不思議な存在『きのこって なんだろう?』

『きのこって なんだろう?』

「きのこ」と聞くと、しいたけやしめじ、えのきなど食卓に並ぶ食材の一つとして思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか。だけど、そもそもきのこって、どんなふうに発生して、どんなふうに育つのか知っていますか?

この絵本では、そんな不思議な存在きのこを、日本の菌類画の第一人者である小林路子さんが、緻密で美しく、迫力のある絵で紹介します。

主役は「ベニテングダケ」。地面からひょっこりと出た鮮やかな色に目が奪われます。「美しい花にはトゲがある」ということわざがありますが、まさにその通り。このきのこ、毒きのこなんです。



そもそも、きのこの美しく開いた傘は植物にとっての花と同じ役割を持っているそうで、木が生い茂る場所や、湿った場所、ときには“そんなところに!?”と驚くような大都会の片隅でも、「あ、きのこだ」と、その存在に気が付くことがあると思います。

気が付いたら地面や木の幹から生えていて、個性豊かな色や形をしているきのこですが、この作品では、私たちの目に触れるまでの間、地面の下では着々と育っている様子がうかがえます。



小林さんの描くきのこたちが美しいのはさることながら、成長していくきのこの過程を丁寧につづった文章から、小さなきのこたちが凛々しくたくましい存在であることに驚かされ、身近なきのこの“不思議”がひも解かれていきます。

きのこがどのように誕生して、どのように最期を迎えるのか、そして新しい命はどのように作られるのか、子どもとの読み聞かせにも、おとなが一人で読んでも、美しい絵と美しい文章にうっとりな作品です。

担当・C
きのこ料理が大好きです。子どものころよりスーパーや八百屋さんで手に入る種類も増えて、初めてエリンギを食べたときはその触感に感動しました。

2025.10.15

記事の中で紹介した本