日々の絵本と読みもの

科学絵本の原点~林明子さんの初めての絵本『かみひこうき』

『かみひこうき』
世の中にはたくさんの紙ひこうき作りの絵本があります。おそらくほとんどは、一枚の紙の上に折り目を丁寧に示し、折る順番をわかりすく説明し、出来上がるまでを追っていったものです。
けれども、絵本『かみひこうき』を開いてみると……。

最初のページに登場するのは、いろいろな形の紙ひこうき。
さっそく飛ばしてみると、先のとがった細長い紙ひこうきは、まっすぐにびゅーんと。翼の広い紙ひこうきは、すいーっと輪をかいて飛んでいきます。

これを見た子どもたちはびっくり!
いったい紙ひこうきはどうしてこんなに飛ぶのかな??
この「好奇心」が引き金になり、自分もつくってみたいな、中身はどうなっているのかなと、目の前にある紙ひこうきを広げて分解していくことになります。
そして、じっくり折り方を「見て」、自分で「考えて」、飛ばし方なども「工夫して」いくのがこの絵本の特徴です。
(つまり、よくある紙ひこうきの「折り方」順ではなく、「分解」の流れで描かれています。)

新しい折り目を作ってみたり、翼に切れ目を入れてみたり、重心を考えてみたり……、自身で失敗を繰り返しながら工夫を重ねていく過程こそ何より大切で楽しいことです。もちろん、立派な紙ひこうきに完成するかどうかは大したことではありません。

ノーベル賞を受賞した研究者の多くが、幼いころ身のまわりにあるラジオや時計などを片っ端から分解して組み立てていったという話をよく耳にしますが、なるほどとうなずけます。溢れんばかりの「好奇心」こそ、「探求」「研究」の始まりになっていくのでしょう。

絵本『かみひこうき』は、まさに理想的な科学絵本です。単なる知識や情報を伝えるのではなく、本当の「学びの道筋」、「学ぶとは何か」を示してくれる作品かもしれません。ぜひ、子どもたちには、子ども時代から自ら考えることを大事にしていってほしいと思います。

また、絵本『かみひこうき』は林明子さんの初めての絵本です。最後の場面に、たくさんの子どもたちが自身の知恵をふりしぼって作ったマイ紙ひこうきが、空を自由に飛んでいく様子が描かれていますが、ここに描かれるひとりひとりの子どもたちの姿に著者のあたたかい眼差しが感じられます。

担当S 折り方を知らないお子さんでも、大丈夫! さあ、飛んで行け!

2025.10.31