『せいろサウナ ぽかぽかや』刊行記念 特別エッセイ|女優・エッセイスト 清水みさとさん

舞台や映画を中心に活躍する女優の清水みさとさん。雑誌「TRANSIT」や「るるぶ&more」「リンネル」「オトナミューズ」でサウナ、食、旅に関する連載をするほか、コミックエッセイ『ご自愛サウナライフ』(原案 清水みさと、漫画 山本あり)も刊行。ラジオ「清水みさとの、サウナいこ?」(AuDee/JFN全国21局ネット)のパーソナリティーを務めています。
大学生の頃から大のサウナ好きで、日本中や世界中のサウナをめぐっている清水さんが、絵本『せいろサウナ ぽかぽかや』について、エッセイを寄せてくれました。
やわらかく、やさしくととのっていく
わたしも、蒸されている気がする。
せいろの中で幸せそうにふくらんでいく肉まんたちを見ていたら、サウナにいるわたしも同じように蒸されてふかふかになっている気がした。
肉まんさんも、シュウマイさんも、自分のいちばんおいしい形を思い出すように、蒸されていく。
気持ちよさそうだし、おいしそう。多分わたしもサウナの中で、こんなふうにおいしくなっているんだろうなぁと思えて、うれしくなった。
「あたたまる」って、なくした輪郭がゆっくり戻って、ちゃんとわたしに戻る感じ?
そんなことを思いながら、ページをめくると、わたしの中でも何かがやわらかくなっていく。
そういえば、買ってきたアイスコーヒーを飲み忘れたままだった。カップのまわりは大量に結露して、サウナでかく汗みたいになっている。
氷はほとんど溶けてるけど、まぁいっか。味はやさしくなるだけだし。って、薄い!と言わないこのやさしさ。やわらかくなったわたしの許しっぷりはなかなかのもんだった。
前作『もののけしょくどう うらめしや』では、夜の食堂でおばけたちがごはんを食べていた。
今作は、昼のせいろで点心たちが蒸されている。
夜と昼、食べることと温まること。
まるで違う世界なのに、どちらもやさしい温かさで繋がっていて、どちらも、世界の温度を少しだけ上げてくれる。
そのぬくもりがあるかぎり、わたしたちはやわらかく生きていける。
この絵本を読んだあと、たまたま入った中華屋で、
わたしは自然にせいろを頼んでいた。
ふたを開けると、湯気のなかで小籠包がふっかふかに蒸されている。
立ち上る湯気が、絵本のページから抜け出してきたみたいで、一瞬、現実と絵本の境目がわからなかった。
湯気の向こうはたぶん「ぽかぽかや」。
わたしも今、そこにいる。
この絵本では、特別なことは起きていない。
ただあたたかくなって、ふかふかになっていく。
でも、それで十分だと思えた。
そんな小さなあたたかさで、生きていけたらいい。
今日もおいしくなってこよっと。
(サウナに行ってきます)
清水みさと(しみずみさと)
大のサウナ好きで、大学生の時から毎日のようにサウナに通い続けている。「サウナイキタイ」ポスターモデルはじめ、サウナに関するラジオ・連載・イベント等、多方面で活躍中。2022年には、お笑い芸人サバンナ・高橋茂雄さんと〝サウナ婚〟を発表。
2025.12.08



