あのねエッセイ

今月の新刊エッセイ|田中達也『めだまのスポット ふたりでさんぽ』

今月の新刊『めだまのスポット ふたりでさんぽ』は、ミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さんによる「見立て絵本」の最新作です。目玉の仲良しふたり組“スポット”が“すぽっと”座ると、座ったものが大変身。見立ての楽しみを存分に味わえる写真絵本です。絵本創作にまつわるエピソードや読者の方へのメッセージなどを田中さんにうかがいました。

目玉で 「見立て」 の楽しみを!

田中達也

Q 絵本が出来たいきさつは?
3作目は、『くみたて』『あーっとかたづけ』とは、ちょっと違う内容にしようと思っていました。見立てられた動物たちが、次々といろいろなキャラクターに変身して苦難を乗り越えていく……というようなファンタジー的なストーリーを当初は考えていたんです。動物がどんどん姿を変えていくなら、ストーリーの軸として、動物とは別に、主人公が必要なんじゃないかとか、じゃあ主人公はどんなキャラクターがいいのだろうとか、とても悩みました。

同時に、読者の子どもたちに「見立て」のルールも伝えたかったので、それらのルールをどうやってストーリーに盛り込むかにも頭を悩ませていました。例えば、「ひとつのものでも、目玉をつける位置が違うと、別のものに見立てられる」というルールなら、ことばで説明するのではなく、「ある日用品に目玉がついたらキャラクターが憑依して動き出し、目玉が別の位置に移動したら、今度は別のキャラクターが憑依して……」というふうに、実際の「見立て」で伝えたいと思っていました。

あるとき、ふと「その目玉自体を主人公にしてしまえばいいんだ」と気づきました。そこから、目玉を主人公にするなら体はどうする? 体があると見立てのときに邪魔になるかも……、それなら睫毛の部分を手足に見立てたらどうだろう……、という感じに目玉のキャラクターがどんどん出来上がっていきました。

絵本のストーリー作りでは、オチが一番大事だと思っているのですが、今回は意外なところから着想を得ました。じつは、ラストシーンは、絵本の構想中に観ていた海外ドラマが影響しています。ふだんの生活では、常に頭のどこかで仕事のことを考えているので、当時は脳みそがずっと「目玉が帰る場所はどこなんだ?」という思考になっていました。

Q スポットという名前の由来は?
目玉たちが、いろいろな場所(スポット)に行く話なので「スポット」になりました。その場所に“すぽっと”おさまる、という意味もあり、両方にかけています。また、観光地を紹介するときによく耳にする「めだまのスポット(は、こちら)」などというフレーズもあるので、面白いかなと。

「○○っと」という音はリズムがあって、耳で聞いても口にしても楽しいので、「すぽっと」以外にも、「がぶっと」「ぴたっと」などのことばを文章のなかにちりばめました。

スポットの仲間として、うさぎの耳をつけた「ラビット」や、唐草模様のほっかむりをしている「ぬすっと」や、シェフの帽子をかぶっている「ココット」など、いろいろな目玉のキャラクターも絵本に登場しているので、探してみてください。

Q 読者の皆さんにひとこと
「見立て」を楽しんで欲しいです。この絵本を読んだ後、自分で目玉を作っていろいろなところに貼って遊んでくれたら、とても嬉しいです。そばにいる大人が促してくれると、より発想が広がるかもしれません。例えば、バナナでも、絵本とは違うところに目玉をつけてみたらどうなるかな? というように。「目玉の位置を変えると違うものに見える」というルールを、読者の子どもたちが自然に気づいてくれたら、よりいっそう嬉しいです。


たなかたつや●ミニチュア写真家・見立て作家。1981年熊本生まれ。 2011年、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を開始。以後毎日作品をインターネット上で発表し続けている。国内外で、展覧会を開催。Instagram のフォロワーは 400万人を超える(2025年10月現在)。著書に『MINIATURE LIFE』『Small Wonders』『MINIATURE TRIP IN JAPAN』『みたてのくみたて』など。絵本に『くみたて』『あーっとかたづけ』『おすしが ふくを かいにきた』などがある。

2026.02.04

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