秋らしいプログラムの中の1冊として図書室のお話し会で読んでみました。冒頭から子どもたちはやわらかい青色の夜道に誘われるようにすーっとお話しの世界に入っていきました。どのページもくいいるように見ていましたが、おつきさまがジャングルジムの中にはいった時です。5歳ぐらいの男の子が2人、ぐぐっと前にでてじっとみつめるのです。ゆっくりページをめくりこんどはすべりだい。そこまでみとどけると、また後に下がっていきました。読み終わったらすぐに、先程の男の子の1人が「ぼくにも、おつきさまついてきたことあるんだよ。こんどジャングルジムにも行ってみる」と嬉しそうに話してくれました。まさに絵本と実体験が重なった瞬間でした。読ませてもらった私まで嬉しくなりました。
作者のことば
月といっしょに
八百板洋子
私は東北の山あいの小さな町に育ちました。晴れた日には、遠く吾妻・安達太良連峰が見えました。高村光太郎の『智恵子抄』に有名な山です。
私の小さい頃は、町に街灯など一つもなく、夜は真っ暗の深い闇となってしまいます。でも夕方、大きな月が山からのぼってくると、あたり一面を徐々に照らし出し、道も桑畑もきらきらと輝き、幻想的な美しさです。
ある夜、幼い私は祖母に手を引かれ、近所の友達の家を訪ねました。祖母はお茶の葉を持って、その友達の農家へ行き、白菜やじゃがいもや卵などと交換してもらうのです。祖母には静岡に親戚があり、お茶の栽培をしていたので、毎年いくらか送ってくれたのです。帰り道は、月だけがこうこうと照り輝いています。私はこわくなり、祖母の止めるのも聞かず、どんどん早足になりました。夜空を見上げると、月が私をずんずん追いかけてくるではありませんか。
私が歩くと月もゆっくり動き、止まると月も止まり、走るとどんどん追いかけてくるような感じがして、こわくなりました。でも、しばらくすると、まるで月と一緒に散歩している気がして、とっても楽しくなりました。月と友達になったのです。
二十代のとき、留学中のブルガリア、ソフィア大学の寄宿舎の窓から毎夜、月を眺めては、幼い頃の月のことを思い出していました。その頃にはもう、月がこわいという感覚はなく、亡くなったという知らせを受けた祖母との日々を、懐かしく偲ぶものとなったのです。
基本情報
- カテゴリ
- 月刊誌
- ページ数
- 24ページ
- サイズ
- 20×23cm
- 初版年月日
- 2025年10月01日
- シリーズ
- ちいさなかがくのとも
- ISBN
- ー
- テーマ
- ー
みんなの感想(3件)
定時で上がれなくて、残業せざるを得なくて、必死で家に向かって歩いているとき、視線を感じて、顔を向けるとそこにお月様。「あ。お月様」そういう経験がわたしには何度もあります。なんでしょう。目があるわけでもないのに、視線を感じるっていうのは。お月様が見てくれている。必死に帰るわたしを見てくれている。それは、焦りよりもむしろ、勇気づけにより近かったように思い出します。そんなことを思い出した絵本です。 青いんだけど、濃い青。でも、月の明かり。明るいけど、暗い。そんな色が、いい。月がついてくる。月を連れて歩く。その感覚が、すごくいいなあ。子どもたちと共有したいなあ。そう思って購入しました。小学2年生の朝の読み聞かせで初めて読んでみました。ワイワイ言いながら楽しんでくれたようです。いつもじゃなくていいんだけど、俯いていた人が、ふと上を見上げたとき、お月様が、誰かを見守ってくれる存在であったらいいな。
八百板洋子さんの優しくて美しい日本語と、深い藍色の繊細な木版画に導かれながら、童心に返ってお月様との散歩を楽しませていただきました。文章にそっと寄り添うように描かれた木版画の温かみを肌に感じ、心がほっこりしました。「おつきさま、ジャングルジムのなかに はいっちゃった!」大人になっても子どもの心を忘れない作者の感性に感動です。素敵なお話を沢山届けてくださった八百板洋子さん、本当にありがとうございました。10月6日はこの本を手に、十五夜を見ようと思います。
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