あかい みと とり

かがくのとも|2026年1月号

ノイバラ、ナナカマドなど、冬に赤い実をつける植物がたくさんあります。植物は鳥に種を運んでもらいたくて、鳥の目にめだつ赤い色で鳥を誘っているのです。鳥がのみこみやすいように、丸くてつるんとした小さな実をつけますが、おいしいとは限りません。毒のあるものもあります。なぜでしょう?「食べてもらいたい。でも、ちょっとだけ」植物の作戦を考察します。

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作者のことば

あかい みと とり
多田多恵子

冬が近づくと、赤い実が目につきます。おなかをすかせた鳥が飛んできます。どの実も鳥が飲み込みやすい大きさと形で、ごちそうの果肉がタネをくるんでいます。タネは消化されずに外に出されます。

赤い実の植物は、鳥にタネまきをしてもらっているのですね。

木の実が赤いわけ
鳥は色覚にすぐれています。赤は「ここよ、食べてね」というアピールです。赤は緑が背景でもよく目立ちます。この本でナナカマドやノイバラなどは落葉樹、マンリョウやナンテンなどは常緑樹です。
一方、虫や哺乳類の多くにとって赤は見えづらい色です。タネを食害する虫や噛み砕く哺乳動物には気づかれにくく、タネを無傷で運ぶ鳥に対してはアピールするとは、植物もなかなかやりますね。

どんな鳥が食べる?
えさになる虫が少ない冬、木の実は鳥たちの貴重なごちそうです。留鳥のメジロやヒヨドリ、ムクドリ、オナガなどのほか、冬鳥のジョウビタキやツグミ、ヒレンジャクなども赤い実を食べてきびしい季節をしのぎます。
ジョウビタキやムクドリは消化できないタネを口から吐き出します。こうした吐き戻しを「ぺリット」といいます。ジョウビタキはノイバラのタネの大半をぺリットに出していました。

「おいしい」実と「まずい」
実 冬の赤い実の多くは渋みや苦みやえぐみを含んで味もまずく、毒を含む実もあります。植物は赤い色で鳥を誘いつつ、まずい成分や毒で「ちょっとだけよ」と一度に食べる量を制限しています。そうしてタネを時間的・空間的により広い範囲にばらまかせているのです。
鳥は噛まずに飲み込むので、哺乳類に比べて味にうるさくありません。それでもたくさん食べると体調が悪くなるといった経験を経て、限度量を学習するのかもしれません。
サクランボのように赤くておいしい実もありますが、こうした実はきまって少量ずつ色を変えながら熟すことで、鳥が食べる量を制限しています。

――この本を作るにあたり、江口さん、編集者Sさんといっしょに東京大学日光植物園に通いました。木の実を集めてタネを観察したり、ジョウビタキを密着取材したり、ヒヨドリの糞を拾って中に入っているタネの種類と数を調べたり、ノイバラの芽生えを探したり……。澄んだ空気の心地よさやフィールド調査の楽しさがみなさんに伝わればうれしいです。

鳥の絵や記述に関しては「NHKラジオ子ども科学電話相談」でご一緒している上田恵介先生に監修していただきました。日光植物園のみなさま、上田先生にお礼申し上げます。

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
28ページ
サイズ
25×23cm
初版年月日
2026年01月01日
シリーズ
かがくのとも
ISBN
テーマ

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