人々の暮らしを守り豊かにしたい
木村 亮
私は大学の教員として「人々の暮らしを守り豊かにする」土木工学を学び、特に土のことに興味を持ちました。地震が発生したとき周りの土から力を受け、基礎構造物やトンネルは変形します。極度の変形をしないようにどうしたらよいか研究しました。
一方、自転車旅行が好きで、一人で日本のあちこちを走りキャンプし、19歳の時にカナダを横断しました。自転車ならどこでも自分の足で行けます。坂道は苦しいけれど、峠の上にたどり着いた時の達成感や、下りの爽快感、地図の上に自分の足跡を残せることに夢中になりました。その後24歳の時にサハラ砂漠を縦断し、ヨーロッパを走り、世界中を5万キロ自分の足で走破しました。
大学で研究者としてやっていけると感じた34歳の時、国際協力機構(JICA)がケニアで実施している大学造りのプロジェクトに参加し、これから発展する国での人造りに興味を持ち、それ以来、100回近くアフリカの大地を踏みました。
30年前のケニアの道路事情は悪く、アスファルトで舗装された道路は全体の10%ほどでした。農業国のケニアでは、毎年雨季が始まると農民たちは畑に種をまき、雨季が終わるころ換金作物を収穫します。それを市場に持っていこうと思っても、雨が多く降ったため未舗装の土の道路は泥だらけになり、車が途中でスタックし作物を市場まではこべず、腐らせてしまうことが問題でした。道が悪いので農民や住民の皆さんが裕福になれず、貧困にあえいでいたのです。道が悪ければ診療所や学校にも行けないのです。
「土のう」を使った道直しは、簡単な方法で、機械を使わず人力で、そこにある材料を使って、経済的に道路を補修する方法です。「自分たちの問題は自分たちで解決する、また解決できる」という意識を広げ、自立に向けたお手伝いです。もう25年間この活動を続け、ケニアでは「土のう」と言う言葉が広がり、道直しに参加した農民や若者のグループが建設会社を設立し、政府も簡便な道直しの方法を理解し、彼らに仕事を発注するようになりました。
私の活動はこれで終わりではなく、道直しから橋造り、ため池造り、水路造りへと発展しています。日本の土木技術者の想いが人々の暮らしを守り豊かにした物語です。皆さんで泥の道がきれいになっていく様子を想像し、彼らの発展を応援してください。