3歳の娘が毎晩寝かしつけ時にこの本を要求してきます。鮮やかな色使いにテンポのいい言い回しが好きなのか、間も飛ばすことなく聞いています。毎日読まされるので、いい加減本がぼろぼろになってきました。ハードカバーを出してほしいです。
作者のことば
上野公園での花見
くら ささら
大学生の時、放送研究部に入っていた。部では毎年花見をするのが恒例で、場所取りは、新入部員でくじを引き、当たりを引いた一人がすることになっていた。その年、実は罰ゲームのような当たりを引いたのは私だった。私は部に代々伝わる、ブルーのビニールシートの巻物を家に持ち帰り、花見当日の早朝に家を出て、上野駅に着いた。先輩からは、「毎年うちの部は上野公園の五重塔近くに陣取ってるから。俺たちは、夕方に行くから」とだけ言われていた。地図で見ると簡単そうに思えたが、実際のところ、上野公園は広大な迷路だった。
私は、人に聞きながら、やっとのことで五重塔にたどりつき、シートを広げた。持ってきたおにぎりを食べながら買ったばかりの村上春樹の『羊をめぐる冒険』を読み終えても、まだ昼間。このまま誰も来なかったら、と思うと、自分がこの世で独りぼっちのような気がしてくる。しかしふと見ると、近くに同じ新入部員のN君が立っていた。「早く来すぎちゃった」とN君。二人で話していると、やがて夕方になり、「ABS! ABS!」という大合唱が聞こえてきた。N君と私があらんかぎりの大声で「ABS! ABS!」と応えると、間もなく、「いたー」「そこかぁ」と先輩たちが、お酒を掲げてやってきた。ABSというのは、部の英語名の頭文字である。携帯電話のなかった時代、私たちの待ち合わせの約束は非常に漠然としたものであり、現地に行ってから、その曖昧さを動物的に埋めていって合流したのである……。
そんな花見を思い出しながら書きました。ジッタとゼンスケは花見ができるのか、どうぞ見守ってあげてください。
基本情報
- カテゴリ
- 月刊誌
- ページ数
- 32ページ
- サイズ
- 19×26cm
- 初版年月日
- 2026年03月01日
- シリーズ
- こどものとも
- ISBN
- ー
- テーマ
- ー
みんなの感想(1件)
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