作者のことば
虫は自然の小さな使者
澤口たまみ
子どもの目は、こんなにも強い輝きを放つものなのだと、心から驚かされた経験が何度かあります。それはわたしの知る限り、おもちゃで遊んでいるときにはほとんど見ることのない光です。子どもが虫という生き物に興味を持ち、もっとよく見たいと願うようになったそのとき、子どもの傍らにいるおとなが、それと分からぬほどのさりげなさで、虫と子どもの橋渡しをすることができれば、多くの子どもは歓声をあげるでしょう。
「あっ、虫がわたしの手のうえを歩いてる!」
子どもの目が強い輝きを発するのは、いつも決まってこの瞬間です。子どもはこのとき、虫に「いのち」があるのだと、感覚的に理解しているように思います。小さくて動くだけなら、虫とおもちゃの違いはありません。でも虫は生きていて、脳があって意志を持ち、こちらの思い通りにはならないのです。わたしたち人間にとって自然は必要不可欠ですが、自然が思い通りにならないことも事実です。虫たちは、そんな自然からの小さな使者のように、わたしには感じられます。
思い通りにならないからこそ、子どもたちは虫と触れ合うなかで、その後の人生において大切な意味を持つ経験をし、考えを深めるでしょう。
今回のおはなしは、わたし自身が鮮明に記憶していた子どものころの体験と、その日の晩に、覚えたての字でお気に入りのノートに書いた「てんとうむしが とんでった。てんとうむしが わたしの ゆびから とんでった」という短い詩がもとになっています。そのとき幼いわたしの目は、テントウムシと触れ合った喜びに輝いていたことだろうと、いまも懐かしく思い出すのです。
基本情報
- カテゴリ
- 月刊誌
- ページ数
- 24ページ
- サイズ
- 23×20cm
- 初版年月日
- 2026年04月01日
- シリーズ
- ちいさなかがくのとも
- ISBN
- ー
- テーマ
- ー
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