福音館書店

やぶがらし

かがくのとも|2026年6月号

ヤブガラシは植え込みに紛れ込み、伸びていくことができる「雑草」です。繁殖力が強く、いちど定着するとなかなか駆除は出来ません。嫌われることの多いヤブガラシですが、可憐な花をいくつも咲かせて、その蜜で多くの昆虫を養います。駆除しようとしても、地中に根が残っている限りまた伸びます。ヤブガラシは、嫌われても強く生きる人生のお手本のような植物です。

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作者のことば

藪を枯らすもの
野坂勇作

2020年4月9日と日付の入っているスケッチ。ぼくが暮らす小さな団地の一角にある公園から持ち帰って描いた、やぶがらしのスケッチです。ちなみに「やぶがらし」という名は、藪(雑木が繁っているところ)を枯らしてしまうほどの勢いがあるというところから、付いたようです。

この作品は2026年の6月号として出版されましたから、初スケッチから6年余りがたったことになります。では、あえてこれほどまでの年月をかけて作ったのかと問われれば、そうではなく。それならば、かかってしまったのかと尋ねられると、そういうわけでもありません。どうやら作品というものには、その作品ごとに、世に出るまでに定められた『時』というものがあるようです。

ただ一方で、年月をかけることに意味のあることも事実です。6年余り、毎日手を動かしていたわけではありません。やぶがらしの枯れる冬場には手を休めることも多く、この間は一度作品を手放し、他人事としているので、その結果再び手を動かす時には、客観的に俯瞰して見直すことができるのです。また別の言い方をすると、この間はいわば「寝かせている」状態にもなるわけですから、そこでは静かに熟成、発酵が進んで、作品に深みや味わいがでてくるのです。この「寝かせては起こし」をくりかえす作品の作り方、仕方は、やぶがらしの生命力のリズムに似ています。あれほど繁茂していても、秋の深まりとともに訪れる霜の朝には、すっかりしなびて、まもなく地上から姿を消してしまいます。けれども地下の根はしっかり栄養を蓄え、太り、縦横に伸ばして、前の年よりも多くの春芽を準備して『時』を待つのです。そうそう、言い忘れてはなりません。この作品の中に登場した花の特徴について、知っておいていただきたいことがあります。植物の専門的な言葉では、本文中の「はなの ふさ」と表現したところは「花序」といいます。雑草とひとくくりに呼ばれているどの植物にも、じっくり目をこらして見つめると、地球上の生命全体のサイクルの中で、それぞれがしっかりその役割を果たしていることに気づかされます。これらのものを厄介者だと遠ざけている人間のほうが、案外このサイクルから、はみ出しているのかもしれませんね。

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
28ページ
サイズ
25×23cm
初版年月日
2026年06月01日
シリーズ
かがくのとも
ISBN
テーマ

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