
2014年11月5日 Vol.175
|
|
まもなく立冬、寒さはまだまだ序の口だけど…… |
いつも「あのねメール通信」をご愛読くださいましてありがとうございます。
朝晩の冷え込みもきびしくなり、セーターやマフラーの恋しい季節になってきました。
今回のエッセイは、そんな季節にぴったりの新刊『フワフワさんは けいとやさん』の作者、樋勝朋巳さんです。『きょうはマラカスのひ』でおなじみになった、ゆるやかに生活を楽しむ登場人物たちの世界をお楽しみください。 |
《1》新刊『フワフワさんは けいとやさん—フワフワさんのいちにち』
の
作者 樋勝朋巳さんのエッセイ |
小さな暮らし 樋勝朋巳
|
|
|
昨年『きょうはマラカスのひ』というはじめての絵本を出版していただきました。主人公のクネクネさんと一緒に、フワフワさん、パーマさんの3人でマラカスのリズムを発表する、ちょっとおかしなお話です。そして今回『フワフワさんはけいとやさん』という2冊目の絵本を出版していただくことになりました。引き続き不思議な登場人物による、今度は毛糸屋さんでのお話です。主人公のフワフワさんは、恥ずかしがりやで編み物が得意です。毛糸屋さんで働きながら一人で丁寧に生活している、小さな暮らしの中でのお話です。
フワフワさんはお客様の注文に合わせて色々なものを編むのですが、ラフスケッチの段階でまずどんなものを編んでもらおうかとあれこれ考えました。まずは帽子からはじまり普通にチョッキなど。次はちょっと個性的なセーター、肩まである長いてぶくろはどうだろう。でもスルッと落ちてしまうから首と肩でつなげてみたほうがいいかもしれない。全身ニットというのはどんな着心地なのだろう…と、だんだん本題から外れて毛糸で編む面白いものをしばらく想像する毎日でした。
登場人物はフワフワさんやクネクネさんやブティックシマさんなど、人間なのか動物なのか、女の子なのか男の子なのか、大人なのか子どもなのかよくわからない面々。そういうことを飛び越えた存在感を描けたらいいなあと思いました。そこにいてくれる愛おしさのようなものでしょうか。暮らしの中にはささやかな楽しみや喜びがあり、静かな願いがある。愛おしい笑い話やこっけいなやりとりが、心配の心をほんの少しだけ安心させてくれるように思います。様々なできごとの隣には小さな暮らしがある。このことをとても大切に考えています。
私はこれまで絵描きとして活動してきました。絵本の中の登場人物たちは、長年私の絵の中で一緒に歩んできたおなじみさんたちです。絵本の仕事に関われることになった時、今まで絵の中で静止していた彼らが言葉を持ち、動き出す時がやってきたのだなあと思いました。モチーフとして描いていた彼らが絵本の中で踊りだし、おしゃべりしている様子は、描きながらも生きているように感じ、言葉と絵で作り出される絵本という表現は、なんて不思議な力をもっているのだろうと改めて思いました。絵本を制作させていただけたことに心から感謝をしています。 |
著者: 樋勝朋巳(ひかつ ともみ)1969年長野県生まれ。多摩美術大学卒業後、銅版画の制作をはじめる。以降、銅版画家として活躍。近年は油絵での発表も多い。1998年、ボローニャ国際絵本原画展入選。絵本の出版はこれが二作目。初めての絵本『きょうはマラカスのひークネクネさんのいちにちー』は、2014年第19回日本絵本賞の大賞となった。
埼玉県在住。 |
|
|
|
『きょうはマラカスのひ—クネクネさんのいちにち』
樋勝朋巳 文・絵
定価(本体1400円+税)
クネクネさんはマラカスが大好き! 今日はお友だちと新しいリズムの発表会を開きます。そこで、クネクネさんは……?マラカスのリズムに乗って楽しいお話が進みます!
|
|
|
|
《2》月刊誌最新号<12月号>のご案内 |
|
|
|
|
|
|
|
こどものとも
『たんじょうびのきのみ』
おうぎ かなめ 作
定価(本体389円+税)
誕生日を迎えた人が前に立つと贈り物が入った木の実を落とすという「誕生日の木」。その木の前にひとりぼっちの黒猫がやってきます。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
《3》月刊誌編集部からこんにちは
|
毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。今月はちいさなかがくのとも編集部です。
ちいさなかがくのとも編集部から
|
この3年、雪が降るたびに動物園へ駆けつけました。「ちいさなかがくのとも」の12月号『ゆきのひの どうぶつえん』の取材のためです。雪の日は来園者が少なく、園内は静かで、動物たちの足音や息づかいまで聞こえてきます。そして風景はすべてまっしろ。フェンスや溝も背景にとけこみ、動物と自分を隔てるものがなくなってしまったかのよう。そんな状況で動物たちと向かい合うと、ドキッ……とさせられます。
特に印象に残っているのは、大雪の日の多摩動物公園です。坂道の多い同園を歩くのはさながら雪山登山で、一歩一歩踏みしめながら、雪だるまのようになって、動物たちに会いに行きました。雪国ではない地域の動物園でくらす動物たちにとって、雪はとっても珍しいものです。だから動物たちはいつもと違う表情や行動を見せてくれます。舞い降りる雪をつぶらな瞳でじっと見つめるカワウソ、転ばないようにそうっとそうっと足をはこぶシマウマ、はしゃいだようすで雪の岩肌を駆けのぼるユキヒョウ、つるんと滑って枝から落ちたレッサーパンダ……。雪と向きあう彼らの姿は新鮮で、イキイキしていて、引き込まれました。おかしかったのは若いチンパンジーで、雪のかたまりを口に入れた後、くるりとこちらを振り向いて口をカパッと開き、口の中の雪を見せつけるのです。いったい何を伝えたいのでしょう? "これうまいよ"と教えてくれていたのか、"いいでしょう"と自慢したかったのか、それとも"これなんだ?"と尋ねたかったのか……わかる方がいたぁw)�迢ウえてください。
本当は寒さが大の苦手の編集担当ですが、それでもまたこんなふうに動物たちと出会いたいと思わせる魅力が、雪の日の動物園にはありました。読者の子どもたちにとって雪の日の動物園の情景はおそらく未知の世界でしょう。秘密の扉を開くように、ドキドキしながらページをめくり、楽しんでくれたら嬉しいです。
★こちらから「ちいさなかがくのとも」をご覧いただけます。
|
|
|
《4》2015年の「ぐりとぐらカレンダー」、好評発売中! |
2013年に誕生50周年を迎えた絵本の人気者「ぐりとぐら」のカレンダーです。絵本シリーズの中から季節に応じた12ヵ月の絵を厳選しました。予定を書きこめる、使いやすいデザインです。ぐりとぐらと一緒に、1年間をすごしてみませんか。
カレンダー特集ページはこちら(カレンダー中面がご覧になれます)
|
ぐりとぐらカレンダー2015
中川李枝子 作/山脇百合子 絵
価格1300円(本体1204円+税)
サイズ26×37cm(広げると52×37cm) |
|
《5》原画展・イベントのお知らせ
|
● JBBY 40周年企画 子どもの本の力展
会期 |
2014年11月13日(木)〜11月25日(火) |
休館日 |
会期中無休 |
開場時間 |
11時〜19時 ※最終日は14時まで |
会場 |
伊藤忠青山アートスクエア
東京都港区北青山2-3-1 シーアイプラザB1F
|
問い合わせ先 |
主催:JBBY(日本国際児童図書評議会) TEL 03-5228-0051 |
入場料 |
無料
|
●ブラティスラヴァ世界絵本原画展
会期 |
2014年9月27日(土)〜 11月9日(日)
|
休館日 |
月曜日(10月13日、11月3日は開館)、10月14日(火)、11月4日(火) |
時間 |
9時〜17時(入館は30分前まで)※10月25日(土)は20時まで開館(入館は30分前まで) |
会場 |
かわら美術館
愛知県高浜市青木町9-6-18
|
問い合わせ先 |
TEL 0566-52-3366 |
入場料 |
高校生以上600円(480円)、中学生以下無料 ※( )内は前売、20名以上の団体料金 |
関連作品 |
『きこえる?』 『おうさまのおひっこし』 『馬の草子』
|
●日本を飛び出した画家たち絵本原画展
会期 |
2014年9月19日(金)〜 11月18日(火)
|
休館日 |
木曜日 |
時間 |
9時30分〜17時(入館は30分前まで)※最終日は15時まで |
会場 |
絵本美術館&コテージ 森のおうち
長野県安曇野市穂高有明2215-9 |
問い合わせ先 |
TEL 0263-83-5670 |
入場料 |
一般800円、小・中学生500円 3歳以上 250円
|
関連作品 |
『ゆっくりのんのちゃん』 |
|
|
|