『おべんとう だれと たべる?』は、タイトルの通り、お弁当が出てくる絵本です。くまさん、おばあちゃん、ねずみさん、あっちゃんとたっくん…いろいろな動物や人がお弁当をつくるのですが、自分用ともうひとつ、誰かのためにつくった料理をお弁当箱に詰めて出かけます。誰と、どこで、食べるのかな?……というお話です。
見どころのひとつは、つくった料理が次のページで、お弁当箱にぎゅぎゅっと詰まっているところです。この絵本の絵は、アルミ板をハサミで切ってから絵の具を塗るという技法でつくっていて、アルミ板でつくったサンドイッチやおにぎりを、同じくアルミ板でつくったお弁当箱に、実際に詰めて(置いて)撮影しました。それは、おままごとをしているような、とても楽しい作業でした。
アルミ板を切って絵の具を塗るという、少々変わったこの技法をすすめてくれたのは、恩師であるイラストレーターの安西水丸さんでした。私のペンネームの"あずみ虫"という名前も、「君、虫に似ているね」という理由から安西先生がつけてくれたあだ名でした。
その安西先生が昨年の3月に急逝され、暗い気持ちで日々を過ごしていたとき、福音館の編集者の方が、絵本の企画案を持ってきてくれました。その会話のなかで編集者さんが「最後は桜の下でみんなでお弁当を食べたらどうでしょう?」と提案をしてくれました。それは偶然にも、安西先生が絵を描かれた、私の大好きな絵本『ピッキーとポッキー』のラストシーンと同じでした。
この絵本の企画は、その時の私にとって何よりも嬉しい贈り物でした。ですので、『おべんとう だれと たべる?』は『ピッキーとポッキー』へのオマージュのような気持ちもこめて描いています。『ピッキーとポッキー』のすみれのサンドイッチの代わりに、すみれのおにぎりを描いたり、ピッキーとポッキーのような二羽のうさぎさんがいたり…。
その後、担当編集者さんを含む色々な方と「ねずみさんはどんなお弁当が好きか?」「四季を感じる絵本にしたいね」「旬の食べ物はどれがいいか?」「冬は寒いから家のなかで食べよう」など、一生懸命に考えました。『おべんとう だれと たべる?』は自分だけでつくった絵本ではなく、みんなでつくった、おいしくて幸せな絵本です。そんな楽しい気持ちが伝わったらうれしいです。
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