
2016年12月21日 Vol.217 |
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メリークリスマス! そして、よいお年をお迎えください。 |
いよいよ今週末は、子どもたちが心待ちにしているクリスマス!
今月のメルマガではクリスマスの新刊絵本をご紹介します。ぜひ手にとってみてくださいね。
本年も「あのねメール通信」をご愛読いただき、ありがとうございました。 どうぞすてきな年の瀬とお正月をお過ごしください。
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《1》『もみの木のねがい』の訳者 おびかゆうこさんのエッセイ |
すがたを変えて、たどり着いた幸福 |
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「おびかさん、なにかクリスマス向けのいいお話、ありませんか?」と、編集者Kさんから連絡があったのは、もう10年以上前のことです。すぐに手元にあった短編集などを読み返したのですが、なかなか、これというお話は見つかりません。そこで、当時ようやく使いこなし始めていたインターネットの本屋さんからクリスマスの物語集を取り寄せ、あれこれ読んでいた中で、ふと心にとまったのが、『もみの木のねがい』でした。地味だけれど、どこか懐かしい、「いいお話」に思えたのです。
その後、こみねゆらさんが絵をつけてくださることになり、美しい挿絵がそえられた『もみの木のねがい』は、見ちがえるほど素敵な作品にすがたを変えました。まさに、絵によってお話に命が吹き込まれたようで、とてもうれしかったのを覚えています。掲載されたのは、小学生向け月刊誌、「おおきなポケット」(休刊中)2004年12月号でした。
さて、『もみの木のねがい』は再話なので、もとになったお話があります。おそらくドイツの伝説から発想を得て、そのお話をつくったのは、19世紀に活躍したドイツの詩人、マーラーやシューベルトの歌曲の詩も手がけた、フリードリヒ・リュッケルトです。リュッケルトが子どもたちに語っていたという、もみの木のお話が、めぐりめぐって、アメリカの詩人、 ヘンリー・ヴァン・ダイクの目にとまり、20世紀前半、"The Foolish Fir Tree"(「おろかなもみの木」)という物語詩になりました。そして21世紀になり、語り継がれていた物語をエステルとジャニィ母娘が再話し、"The Wish of the Fir Tree"(『もみの木のねがい』)として、クリスマスの物語集、"Christmas Stories Together"におさめました。
ヴァン・ダイクの詩では、本来のすがたにもどった「もみの木」は、そのまま森にとどまり、緑の葉を雪で飾ります。心に残る静かな情景ですが、やはり、子どもたちのいる、あたたかいお家の中に運ばれ、きれいなクリスマスツリーになる、エステルとジャニィ版の結末のほうが楽しいですね。
今回、絵本版が出版されることになり、『もみの木のねがい』は、また、すがたを変えることになりました。なにより場面数が大幅に増え、絵がすべて新たに描きおろされました。可愛らしい妖精や、きれいなクリスマスのオーナメントを、こみねさんがたくさん描いてくださっています。文字組みは縦書きから横書きになり、絵本の形式に合うように、訳文も全面的に見直しました。
お話の中でも、もみの木は何度かすがたを変えます。そして最後の最後に、いちばんの幸せを見つけました。自分にとって本当の幸福にたどり着くには、紆余曲折があるものです。時を経て、美しい絵本になったことを、もみの木もきっとよろこんでいると思います。
読者の皆さんにとっても、どうか、心あたたまる、幸せいっぱいのクリスマスでありますように! |
おびか ゆうこ東京都生まれ。国際基督教大学語学科を卒業。出版社勤務、ドイツ留学を経て、現在は子どもの本の翻訳や創作にたずさわっている。児童書の訳書に『うちはお人形の修理屋さん』(徳間書店)、『ルール!』(主婦の友社)、絵本の訳書に『だれかぼくをぎゅっとして!』(徳間書店)、『ジャックと豆の木』、『エリーちゃんのクリスマス』(ともに福音館書店)、創作のお話に「はっぱちゃん」(「おおきなポケット」168号、福音館書店)などがある。東京都在住。 |
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『もみの木のねがい』
日本傑作絵本シリーズ
エステル・ブライヤー、ジャニィ・ニコル 再話
おびか ゆうこ 訳/こみね ゆら 絵
定価(本体1,300円+税)
4才から
もみの木は、自分のチクチクした葉が大嫌いでした。妖精に頼んで、柔らかい葉に変えてもらいますが、ヤギに食べられてしまい…… |
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《2》『ぐりとぐらカレンダー2017』好評販売中 |
毎年、楽しみにしていただいている方も多い『ぐりとぐらカレンダー2017』を発売中です。今年も、もう残すところあとわずか。2017年のカレンダーのご用意がまだの方は、ぜひお買い求めください。全国の書店でも取り扱いがございます。店頭に在庫がない場合は、お取り寄せも可能です。
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《3》月刊誌編集部からこんにちは |
毎月交代で月刊誌の編集部から、読者の皆様にむけてメッセージをお届けしています。今月は、「かがくのとも」編集部です。
かがくのとも編集部から 「かがくのとも取材あれこれ」 |
「かがくのとも」の作品作りに欠かせないもの、それは取材です。「かがくのとも」編集部員から聞き取り調査をした思い出深い取材あれこれをご紹介します。
●たんぼの稲刈り取材、10分で音を上げる。取材先の農家の方は90歳近いおじいさん。かたやこちらはその半分以下の年の成年男子。すぐに腰は痛くなるわ、腕が上がらなくなるわで『もう無理です』と泣きを入れてしまった。
●夏の森の中でカブトムシを一晩中追いかける。クマ出没注意の看板を脇に見ながら、空腹とヤブ蚊の攻撃に耐えながら、夜の10時から朝の10時まで徹夜でカブトムシを求め歩き回る。恐怖と睡魔と空腹と疲労の四重苦。
●キジが現れるのを国道沿いの畑の脇で数時間カメラ片手に車の排気ガスに耐えながらひたすら待つ。体を動かす取材は肉体的にきついが、動かずにひたすら待つというのは精神的にきついもの。
●山の中の林道で子グマに遭遇。距離はわずか40メートルほど。元々クマを求めての取材だったので、目撃できたのはよかったが、母グマが近くにいるのではないかという恐怖と闘いながら撮影。
●調布から伊豆大島までの小さな飛行機取材。著者の操縦する4人乗り小型飛行機に同乗し風景をカメラで撮影していたが、旋回などを繰り返すなかでファインダーを覗き続けていたら飛行機酔いになる。途中で降ろしてもらうことは無理だし、「もうだめ」という感じを久しぶりに味わう。
なぜか大変だった取材話ばかりになってしまいましたが、案外とこういうつらい体験の方が心に残っているものです。そして、この経験こそが作品のリアリティにつながってくるのではないかと思います。
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《5》原画展・イベントのお知らせ |
●谷川俊太郎展・本当の事を云おうか
概要 |
本展では、少年時代に夢中になったという模型飛行機や、その後のラジオコレクションの一部などを紹介しながら、谷川さんの原点を探り、自身の手による写真などから、詩人の背後に見え隠れするものを探っていきます。 |
会期 |
2016年9月22日(木・祝)〜 12月25日(日) |
会場 |
大岡信ことば館(静岡県三島市) |
関連作品 |
『にほんご』 |
●赤羽末吉 中国とモンゴルの大地
●まるやまあやこ絵本原画展
●かんがえるカエルくん展
概要 |
『かんがえるカエルくん』が1996年に刊行されて20年。4コマでリズミカルにこどもの素朴な疑問を考えていくこの絵本は、各国でも翻訳出版されています。そんな、世界のこどもに愛される『カエルくん』の魅力にせまります。 |
会期 |
2016年12月3日(土)〜2017年2月26日(日) |
会場 |
いわむらかずお絵本の丘美術館 |
関連作品 |
みんなの人気者「かんがえるカエルくん」 |
●『子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝』刊行記念 荒木田隆子氏講演会
概要 |
『三びきのやぎのがらがらどん』『おだんごぱん』『げんきなマドレーヌ』『チムとゆうかんなせんちょうさん』などの作品を翻訳した瀬田貞二氏(1916−1979)。その生誕100年を記念し、担当編集者として、瀬田氏と深く関わった荒木田隆子氏がその仕事について語る『子どもの本のよあけ―瀬田貞二伝』(2017年1月11日発売予定)が刊行されます。刊行を記念して荒木田氏の講演会を開催します。 |
開催日 |
2017年1月29日(日)
※申込〆切は1月10日(火)まで。
詳しくは教文館ナルニア国ホームページをご覧ください。 |
会場 |
教文館9階ウェンライトホール |
関連作品 |
福音館書店 瀬田貞二ページ |
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