母の友

福音館の月刊子育て雑誌「母の友」から生まれた単行本シリーズ「母の友の本」。そのラインナップをご紹介します。

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『こどものみかた 春夏秋冬』

『こどものみかた 春夏秋冬』

柴田愛子 著
定価(本体1200円+税)
装画・100%ORANGE
扉写真・繁延あづさ
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子どもをじっくり見てみたら……子どもの心のドラマが見えてきた!

NHK「すくすく子育て」にも登場、ベテラン保育者、柴田愛子さんによるエッセイ集。ときに不可解な子どもの行動の「理由」が見えてくる!

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Photograph © Azusa Shigenobu 2016

『こどものみかた春夏秋冬』から

海に遠足に行く日でした。残念ながら、外は雨。駅の改札前に集合予定でしたが、朝に子どもたちの家庭に電話連絡を回しました。「今日の遠足は延期にします。いつものようにりんごの木に来てください」とさらに続きを読む子どもたちが次々とやってきましたが、何も言いません。遠足に行けなかったことを何も思っていないのかと不思議でした。そこで、あかりちゃんが来たときに「今日は残念だったね」と声をかけました。すると私をにらみながら「かってにきめた」と、小さいけれど強い声で言われました。
(本文9ページより抜粋)

1948年東京都生まれ。82年から神奈川で〝ちいさな幼稚園〟「りんごの木」を始める。『親と子のいい関係』(りんごの木刊)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます:子育てに悩んでいるあなたへ』(小学館刊)など子育て・保育に関する著書多数。絵本『けんかのきもち』(伊藤秀男絵、ポプラ社刊)で日本絵本大賞受賞。

『ははがうまれる』

『ははがうまれる』

宮地尚子 著
定価(本体1100円+税)
装画・呉夏枝
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「母性」は女だから備わっているものではない、というような著者の言葉は、思い通りにならない子育てのなかで挫折感に打ちひしがれる母親の気持ちを救うはずだ。

―― 長島有里枝(写真家)
読売新聞書評欄「本よみうり堂」2016年4月10日掲載の書評より

精神科医がやさしく綴る子育てのヒント。「赤ちゃんの泣き声」「結婚相手との風習の違い」「子どもとの話題」などに悩んだら。

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Illustration © Haji OH 2016

『ははがうまれる』から

母親のための酸素マスク

 飛行機に乗ると、緊急対応用のビデオが流される。「酸素マスクが降りてきたら、たとえ子ども連れであっても、まず自分が落ち着いてしっかりマスクをつけて、それからお子さんにつけてあげましょう」という指示が、その中には必ず入っているさらに続きを読む「これって子育て全般にも言える」としみじみ納得し、そして考え込んでしまう。母親にも酸素マスクが必要なことが忘れられていて、母親のためのマスクなんて用意されていないようなことも多いと思うからだ。
(本文77ページより抜粋)

兵庫県生まれ。京都府立医科大学卒業。一橋大学大学院社会学研究科地球社会研究専攻・教授。精神科医師。医学博士。専門は文化精神医学、医療人類学、トラウマとジェンダー。著書に『傷を愛せるか』(大月書店刊)、『トラウマ』(岩波新書)などがある。

『答えは子どもの中、お母さんの中に』

『答えは子どもの中、お母さんの中に』

渡辺範子 著
定価(本体1100円+税)
装画・山内ふじ江
写真・平岩亨
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未来への希望、今こそとばかりに輝く命。この本は大人たちの一生懸命を励ます。

――宮下奈都(作家/本屋大賞受賞『羊と鋼の森』)

保育園の園長を長年つとめた著者によるエッセイ。子育てのヒント、園での子どもたちの様子、難病を抱えた我が子とのエピソードを収録。

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Photograph © Toru Hiraiwa 2008

『答えは子どもの中、お母さんの中に』から

子育てに行きづまり、どうしたらよいかわからなくっても、まずは落ちついて子どもを見ましょう。どうしたらいいのか、その答えはすべて、子どもの中、そしてお母さんの中にあります。
(本文13ページより)さらに続きを読む
息子は三歳のときに、今の医学では治療法のない病気だと診断されました。私は落ち込みました。そんな母とは対照的に、子どもの明るさは希望の未来を見ています。私は何をしているのか。「この子たちと一緒に、私も大きくなりたい」と考え、保育士の資格を取りました。私はまず自分の子どもから答えをもらったのです。
(本文24~25ページより)

1942年大阪府生まれ。私立四天王寺高等学校卒業後、会社勤務を経て結婚。’70年長男の病気をきっかけに保育士資格を取得、無認可の観心寺幼稚園に勤務する。’78年、認可保育園となった同園の園長に就任。2013年退職。2014年没。

『絵本の記憶、子どもの気持ち』

『絵本の記憶、子どもの気持ち』

山口雅子 著
定価(本体1000円+税)
装画・酒井駒子
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山口雅子さんが巧みに引き出した若い人たちの記憶です。子どもの真実があふれていて、私は驚き、たいへん感動しました

―― 中川李枝子(児童文学作家)

子どもの頃に読んだ絵本の記憶は、心にどのように残るのか。長年児童図書館活動にかかわった著者が、大学生たちのレポートから探る。

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書名索引『ちいさいしょうぼうじどうしゃ』『おおきなかぶ』 福音館書店刊

『絵本の記憶、子どもの気持ち』から

 人間の記憶とは、不思議なものです。
 Hさんは『ひとまねこざる』の黄色い表紙を見た瞬間、中に描かれている絵も、それから、その絵本を読んでもらったのは、通園バスの順番を待っている間で、それをとても楽しみにしていたことまでも思い出しましたさらに続きを読む
 鮮やかな黄色は褪せることなく、Hさんの心の奥にしまわれていたのでしょう。「ひと目見たとたん、思い出した」と書いていたのは、Hさんだけではありませんでした。私が忘れられないのは、別の学校の男子学生の例です。
 彼は、初めのうち、退屈そうに講義を聞いていたのですが、私が『ちいさいしょうぼうじどうしゃ』を開いて見せたとたん、その中の小さな犬の絵を指して、「あっ、ティンカーだ! おれ、ティンカー、好きだったんだ」と叫びました。そして、あらすじやら絵本にまつわる思い出やらを話しはじめて、周りを唖然とさせたのです。
(本文20~21ページ)

1946年神奈川県生まれ。上智大学外国語学部卒業。松岡享子主宰の家庭文庫で子どもの本にかかわる。財団法人東京子ども図書館(現在は公益財団法人)設立と同時に、職員として児童図書館活動に参加。退職後も子どもと本の橋渡し役として、絵本や語りの講座で講師を務める。学習院女子大学非常勤講師。訳書に絵本『こぶたのバーナビー』(U・ハウリハン作、中川宗弥絵、福音館書店刊/こどものとも年中向き168号)がある。

『女のせりふ』『続 女のせりふ』

人生には、忘れられない、“せりふ”がある。

長年、女性問題学習に携わってきた著者が、日常生活や文学、映画の中で出会った女性たちの言葉を紹介し、その奥底に潜むものを探る。

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『続・女のせりふ』から

しっかり夫婦喧嘩をしたほうがいいわよ

「お互いに対等で、尊重し合っていて、いいご夫婦」と評判の大先輩。喜寿のお祝いの席でみんながその秘訣を尋ねたら、こんな答えが返ってきたさらに続きを読む
「買いかぶらないで。ただ、私たちは若いころからさんざん喧嘩をしてきたから、この程度でおさまっているだけ。あなたたちもしっかり夫婦喧嘩をしたほうがいいわよ」
 こんな場合、「うまく操縦すればいいのよ」などとしたり顔をしがちなのに、夫婦喧嘩を奨励するところがこの方らしい。
『続 女のせりふ』(本文26ページ)

1939年、中国・大連生まれ。’99年まで東京・国立市公民館職員として、主に女性問題学習に取り組む。その活動からは『主婦とおんな』(国立市公民館市民大学セミナー著)などの記録が生まれた。著書に『子どもからの自立』(1975年度毎日出版文化賞受賞、現在は『新版・子どもからの自立』が岩波現代文庫に収められている)、『女の現在』(未来社刊)などがある。