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怨霊退散ゲロンゲロン! かえるたちが織りなす、菅原道真公の物語『かえるの天神さん』

怨霊退散ゲロンゲロン! かえるたちが織りなす、菅原道真公の物語

『かえるの天神さん』

学問の神様として知られる「天神様」。太宰府天満宮、北野天満宮、関東では湯島天神などが有名ですが、天満宮、天神社は、全国になんと12,000社ほどあるのだとか! 特に、北野天満宮がある京都では、「天神さん」と呼ばれて親しまれているのだそうです。

本日ご紹介するのは、そんな天満宮・天神社で祀られている菅原道真公を描いたユニークな絵本『かえるの天神さん』です。国宝「北野天神縁起絵巻」をもとにした美しく迫力ある作品ですが、なんと登場人物たちが全員「かえる」! そのユーモラスな姿と軽妙なせりふ回しで、中世の絵巻物が子どもたちにも親しみやすい絵本になりました。

お話の舞台は、かえるの国のみやこ。学問の才能に溢れた、賢く清いミチザネさんは、時の帝 ウダ天皇にも引き立てられ、押しも押されぬ大学者となりました。続くダイゴ天皇によって右大臣に任ぜられたミチザネさんですが、左大臣となったフジワラのトキヒラ公は、ミチザネさんが重用されることがおもしろくありません。天皇に嘘を吹き込んで、ミチザネさんを大宰府に追放してしまいます。

太宰府でのミチザネさんの住まいは、貧しいあばら家。自らの境遇を嘆いて、「わたしの無実を はらしてください」と祈り続けていると、天上界からお告げの声が届きます。
「なんじの 無実は あきらかなり。これよりのちは『天満大自在天神』と 名のるがよい」
生きたまま神様になったミチザネさんは、ほどなくしてあの世へ旅立ち、怨霊となってみやこに舞い戻ります。さて、帝やトキヒラ公の身に、一体何が起こるのでしょうか……?!

この絵本の見どころは、荒れ狂うミチザネさんの怨霊の激しさ。雷神となって嵐をおこし、仇敵の耳から蛇となって現れる様子が、斎藤隆夫さんの緻密ながら勢いのある筆致で描き出されています。原文では少し複雑だった物語を、子どもたちが理解しやすいようにかみくだき、リズミカルな文章にしあげたのは、昔話を多く手掛ける日野十成さん。「ひっくりかえる」「にえかえる」など、「かえる」が隠れた言葉づかいや、「怨霊退散ゲロンゲロン」といった耳に残るフレーズも満載です!

〈かえるの絵巻シリーズ〉には、ほかに『かえるの平家物語』『かえるの竹取ものがたり』も。古典に触れるのにぴったりのシリーズです。こちらもぜひ、お手にとってみてくださいね。


担当・T
関東育ちなので、受験といえば湯島天神。ミチザネさんに何度もお世話になった入社4年目。

2020.01.23

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