福音館書店

ねずみのおいしゃさま

こどものとも|1957年2月号

大雪の晩、ねずみのお医者様は、風邪をひいたりすのぼうやの家へ往診にいくことになりました。ところが、乗っていたスクーターに雪がつまって立ち往生、近くにあったかえるの家へ避難しましたが、そこでうっかり寝入ってしまい……。ちょっとそそっかしくてゆかいなお医者様の話です。

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「ねずみのおいしゃさま」メモ
――おとうさんも絵本を―― 中川 正文


 絵本というものは、なによりも絵が中心でしょう。一まい一まいページをめくることによって、いわば絵巻物に接するように、物語の推移がわかり、それで十分たのしめるものでありたいと思います。
 わたしは今度「ねずみのおいしゃさま」という物語をかきましたが、これは画家の永井さんが絵にしてくださる手がかりとなれば……位の気持でありました。
 だからほんとうは、この解説も、画家の永井さんか、または絵本にのせる文章として、わたしの物語を再構成してくださった編集者の方に書いていただくのが、一ばんいいようですが、わたしも家庭で絵本を子どもたちに与える立場にありますので、そういう観点から、すこし利用の仕方を考えてみましょう。
★表紙「ねずみのおいしゃさま」と標札(ひょうさつ)みたいなものが表紙です。この題と表紙の絵が暗示している物語の筋立を、ここで、いろいろ話しあってみましょう。お父さんの説。お母さんの予測。そして子どもの空想。そして、このネズミのお医者さまは、ほんとは、どんな活躍をするだろうか、という期待感で一ぱいにしてください。――これが表紙の役目です。
 では秘密の扉をあけるような、おごそかな顔でページをおめくりください。
★第一面 説明の文章など、あとまわしでよろしいです。しっかりと、何と何とが描かれているか十分に見せてください。納得(なっとく)のいかぬところや、よくわからないところは、説明してやってください。そこで「電話をかけてる母おやのリス」の絵と「出る支度をしているネズミのお医者さま」との関連を聞きただしてくださってはいかがでしょう。アンデルセンは子どもの頃、劇場にはいれないものだから、プログラムにのった登場人物たちの名まえから、あれこれ物語を空想したそうですが、この二つの場面の結びつきなど、満四歳半ぐらいだと、たちどころにわかると思います。「そうだ、そのとおり! 御名答!」というわけで、子どもたちを得意にしてやってください。それから、説明文をよんでやればいいでしょう。 
電話の役割や、医者のつとめのつらさはもちろんよくわかると思います。
★第二面 いよいよスクーターにのって出動という場面です。情景としては、たいへんわかりやすい場面ですから、子どもたちにしても、早く次のページに進みたいでしょう。あまりじらさないで次は移りましょう。
★第三面 吹雪(ふぶき)の中の立往生(たちおうじょう)です。ここではすこしストップしましょう。この主人公のように立往生すれば、どうなるか、これから、どうしたらよいか、考えさせてください。鉄道のようにラッセル車なんかがあれば、いいのですけれどね。そこでカエルの家を発見するわけですが、子どもたちはカエルの家というと、どういう映像を描いているでしょうか。ちょっとお父さん方やお母さん方にしても、興味あることだと思います。ここではうんと好奇心をあふりたてて、サッと次のページをめくってください。
★第四面 ひょっとすると「なーんだ、こんな家か」と思うかもしれませんね。つまりこれは冬眠中のカエルの家というわけです。冬眠の説明は、すこしやっかいです。」科学的に正確に説明してもおそらく理解できないだろうと思われます。だから永井さんの絵には、むしろ科学的には逆だと思われるストーブすら、しつらえてあります。「――カエルはね、寒いから土の中で、ひっそりと眠って、春まで待ってるの。」くらいできりあげていただいていいでしょう。「じゃあ人間は?」ときけば「みんな仕事があるでしょう。いそがしいでしょう。」程度でいいのではないでしょうか。
 もちろん科学的な正確さは大切です。でもマカレンコという人もいいましたように、子どもたちに「飛行機はなぜとぶか。」ときかれた場合、わたしたちはエンジンの構造や作動を説明してやることが出来るでしょうか。説明は当然できませんし、子どもたちには、何が何だかわからないでしょう。「プロペラがまわてるの。」という程度のこたえが、いちばん正当です。
 冬眠というのも、わたしが言ったくらいのところで軽くとばしてください。冬眠する動物には、カエルのほかに何がいるかくらいは、つけくわえていただいていいでしょう。
★第五面 雪にぬれたネズミは、そこで一休みします。何しろ前へ進めませんから、仕方ありません。きっとリスの坊やのことは、気がかりだったでしょうが、自然の暴威のまえには、ついに、のんきものの本性を出して、なりゆきにまかせる気持になったのでしょう。そんなネズミのお医者さまとは反対に、世の中では、大ぜいの人たちが、夜もねないで働いている、というのが、この面のねらいです。いくつか出してありますが、まだまだたくさんあるはずです。子どもたちに、考えさせてください。あまり脱線すると、物語の本筋から離れて、物語の面白さを少くするという恐れもあるかもしれませんが、この絵本は、むしろ脱線していただける要素を、わざと多く折りこんであります。(幼稚園教育要領の保育の内容の各項目を、ほとんど加味してありますから、教育要領をお持ちの方は、参照してください。)
★第六面 さて次の場面は、失敗の巻というところでしょうか。
 目をさますと、太陽はのぼっているし、雪はとけているし、ネズミのお医者さまは、キョトンとしています。ここでは、子どもたちといっしょに明るく笑ってください。
 リスの坊やのことを思いだしたネズミが、交通道徳も何も忘れ、あわてふためいて走っていくユーモラスなようすを、ただ楽しんでいただけだら結構です。
★第七面 ネズミのお医者さまを迎えるリスの一家は、食事中でした。坊やもよくなっています。一晩ひやせば全快するようなかぜだったのかと、物語の作者は、いくぶん恐縮ですが、きっとすなおにお母さんのいうとおり、ひやしたからでしょうね。
 そして、こんどは、お医者さま自身がかぜをひく番ですが、楽天的な夫婦ですからいっこう苦にしているようすもないようです。また「お医者さまも病気になる」ということに、興味を示す子どももあるでしょう。
 ここで、かぜをひく原因や、かぜをひかないための注意などは、わざとしないでください。もしそれをやっていただくのなら、二三日たってから、復習していただく時でいいです。
さてこれで全ページは終わりましたが、出来たらその場で、こんどはお父さんやお母さん方が聞き役にまわって、子どもたちから説明をきくようにしてください。そして、大いに、いばらせてください。効果的です。いま聞いたことを、すぐそのあとで繰り返させるのは、短い時間に統一的にものを把握する力をつけます。立往生しても笑わないで、なるべく神妙にきいてあげてください。
 わたしはこの解説の中で、「お父さん」という言葉を何度か挿入しましたが、いそがしいお父さんを、絵本に引きよせる努力を、お母さん方に期待しています。ほんとうは終日顔をあわせているお母さんより、お父さんの方が目新しくていいし、またお父さんの方が、どちらかというと、お母さんよりも話しあいがじょうずのようです。
冬眠する動物のいろいろ
*変温動物(冷血動物)――外界の温度のちがいによって体温がかわる動物――では、カエル、ヘビ、トカゲ、カメ。魚ではコイ、フナ、ウナギ、キンギョなどがある。ミミズも冬眠する。
*恒温(こうおん)動物(温血動物・定温動物)――外界の温度に影響なく、常に一定の体温を調節によってたもつ動物――では、コウモリ、ヤマネ、モルモット、ハタリス、リス、ハリネズミなどがあるが、種類や、すんでいる地方により、眠りのていどがちがう。リスの中には冬眠期間がごくみじかく、気温があたたかいときは動きだして、巣にたくわえたドングリなどの食べものをはこぶこともある。この物語でリスの子がかぜをひいたのも、よくいうことをきかず冬眠しなかったからだろう。(編集部)

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
16ページ
サイズ
26×19cm
初版年月日
1957年02月01日
シリーズ
こどものとも
ISBN
テーマ

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