のろまな ローラー

こどものとも|1960年9月号

ローラーが重い車をごろごろ転がしながらゆっくり道を進んでいると、大きなトラックや立派な自動車、小型自動車が、怒ったりばかにしたりしながら、次々に追い越していきました。ところがでこぼこ道の坂を登っていくと、道端にさっきの自動車たちがパンクして停まっています。ローラーがしっかりでこぼこ道を直していくと……。山本忠敬が乗物絵本の手法を確立した作品。

  • 読んであげるなら
    5・6才から
  • 自分で読むなら
品切れ中です※在庫は小社の在庫状況です。在庫や取扱いの状況は各書店によって異なります。
¥50(税込)

● お申し込みについての詳細はこちら

● 海外への発送をご希望の方はこちら

※上記価格は当該号刊行当時の価格です。

この商品をシェアする

作品についてもっと知る

乗り物とのめぐりあい 山本忠敬(画家)

 僕が三、四才のころ、父の勤めていた自動車販売店に行き、店に飾ってあったトラックの運転席に乗って、警笛のラッパをブウブウ鳴らして、一日中遊んでいた記憶があります。
 これが僕の人生で、遊びのために乗った最初の乗り物で、時代は大正八年ごろでした。
 次は三輪車です。お正月に買ってもらいましたが、なぜか、青い美しい車の色のみ覚えていて、それに乗って遊んだ記憶が全然ないのです。
 僕が小学生のころ、当時、街の自転車屋で自転車の時間貸しをしていました。よく、その自転車を借りて乗りました。もちろん、おとな用の自転車なので、やっと足がペダルにとどくぐらいでした。乗るときは、おこづかいをためて、二、三時間借ります。だから止まっているのは一分も惜しくて、借りた時間中、乗って走りっぱなしです。時間が来て、自転車を降りて家に帰っても、まだ足が宙に浮いていて、なんだか空中を歩いているようで楽しかったものでした。
 また、このころ、オートバイの後ろに乗せてもらって、ブッ飛ばして走りました。このスピード感は今でも忘れられないのですが、あるとき、オートバイから落ちて、頭をいく針か縫いました。おかげで、オートバイにも自転車にも乗ることを禁じられてしまいました。
***
 陸の乗り物がいけないのなら、水の上の乗り物なら良いだろうと、今度は舟に乗って遊ぶことを考えました。
 当時の僕の遊びの県内に、江戸川公園という所がありました。この公園は、早稲田からお茶の水へ流れている江戸川の鶴巻町近辺の川岸にあって、そこに貸し舟屋があり、ここでボートを借りて、こいで遊ぶことを始めました。
 小学生の子どもが一人でボートこぎに来るなんて、よほど舟が好きなんだろうと、貸し舟屋のおじさんにみこまれて、和舟を竹ざおでこぐことを教わりました。こんな面白い乗り物はありません、とにかく一本の竹ざおで舟を自由にあやつって、川を上り下りするのですから。
 日曜日ごとに貸し舟屋に通いました。この舟の楽しさは、今でも乗りたいと思う楽しさです。
 中学生になると、学校の端艇部に入り、卒業までボートをこぎました。また夏には、房総の海でヨットに乗って遊びました。
***
 昭和十年代になって美術学校に入ると、乗り物遊びとの縁も切れて、お酒との付き合いが始まり、とことん飲んだ帰りには、車代もなく、夜中に上野から小石川の家まで、自分の足で歩いて帰ることがチョクチョクで、遊び以外の、生活に必要な乗り物にもみはなされそうでした。
 戦後の一時期、小型自動車・ルノーに乗ってドライブを楽しみましたが、お酒との付き合いに負けて運転をあきらめました。
 そのかわり、自動車、汽車、電車、船、飛行機から宇宙船まで、あらゆる乗り物の絵を描きながら、まるで自分が運転している気持ちになって、すべての乗り物は自分のものだ、とばかり、今では楽しんでいます。
 ***
 この絵本、『のろまなローラー』を描いたころは、新宿から荻窪までの路面電車(都電)のレールがはずされて、道路工事の最中でした。
 この工事場の阿佐ヶ谷付近で、のろまなローラーにピッタリのローラー車をみつけました。毎日、二時間くらい、ローラー車の働く姿をスケッチしたり、写真撮影したりしてついてまわって、一週間目に、ついにローラー車の運転台に乗せてもらい、この絵本のローラー君が生まれたのです。

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
20ページ
サイズ
26×19cm
初版年月日
1960年09月01日
シリーズ
こどものとも
ISBN
テーマ

みんなの感想(0件)

まだ感想がありません。
ぜひお寄せください。

※いただいた感想は編集を加えたうえで、弊社宣伝物に使用させていただくことがございます。また、本サイトのより良い運営を妨げると判断した感想は、予告なく削除する場合がございます。ご了承ください。

※ご意見・ご感想への返信はいたしておりません。ご質問・お問い合わせについてはこちらをご参照ください。

※ご登録いただいたメールアドレスは、レビューに関する弊社からの問い合わせや連絡等の目的以外には使用しません。

あのねメール通信

著者のエッセイや新刊情報を
毎月メールで配信します。

SNSで最新情報をチェック