とべ! ちいさいプロペラき

こどものとも|1989年4月号

新しい小さいプロペラ機は、初めて空へ飛びたつ日を待っていました。ある日格納庫に、外国から帰ったばかりの大きなジェット機が、ひと休みするために入ってきました。小さいプロペラ機は自分があんまり小さいので不安で心細く思っていましたが、大きなジェット機に励まされ、初めて大空に飛びたつ日を迎えます。ひとりだちする日の武者ぶるいするような気持を、感動的に描いています。

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飛行機の窓から 小風さち

 永年住み慣れた英国を、後にする日のことでした。私はなかなか飛び立たない飛行機の窓から、ぼんやりと外を眺めていました。決してぼんやりした気持ちでいたわけではなかったのです。ただ、そうする以外なにも出来なかったのです。
 飛行機の窓は楕円形で、二重になっていました。窓の外側には、水滴が付いていました。雨の日ではなかったので、きっと機体に付いていた朝露か何かだったのでしょう。
 飛行機は滑走路へと向かいはじめました。ガタガタとにぶい揺れ方をして速いのか遅いのかわからないスピードで進みます。すぐ下を、青々とした草が流れ過ぎていきました。
私はその草の内のいく種類かを知っていました。名前も、摘む時の感触も、茎を噛んだ時の苦さまで私は知っていました。その苦さが春と夏では違う事も。その感触が秋と冬では違う事も。四季を巡り、そして巡り、幾度も幾度も、私はこの草たちと、この国の大気を呼吸し、この国の大地に心を寄せ、この国の友と肩を合わせて過ごしてきました。
私は誰にも見送られませんでした。この国の友は、誰一人、決して私にさよならを言おうとしませんでしたから……。
私は、草に見送られました。 
私を乗せた飛行機は、滑走路の脇で離陸の順番を待っていました。そう、私がちいさなプロペラ機を見かけたのは、その時です。プロペラ機は、離陸待ちの大きなジェット機がずらりと居並ぶ中、プルプルパタパタとはずかし気もなく、大胆にもたった一人で、滑走路の真ん中に進み出たではありませんか。彼は、飛ぶ気でいるのです。全く信じられないような光景でした。私が見ていますと、プロペラ機はそれから一つ二つ深呼吸をしたようでした。それから、御覧のとおりの真っ赤な顔をして、空へ翔び発っていったのです。
それが、それからの私を何より勇気づけてくれた、この「ちいさいプロペラ機」です。

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
32ページ
サイズ
19×26cm
初版年月日
1989年04月01日
シリーズ
こどものとも
ISBN
テーマ

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