福音館書店

もりのてがみ

こどものとも|1990年3月号

寒い寒い冬、ひろこさんは森の友だちに手紙を書きました。緑色の目をしたリスに、「またいっしょにクルミを拾いましょう」と。しっぽを踏んでしまったトカゲに、「心配しています」と。小鳥たちに、「私にとまって歌ってくれない?」と。手紙は大きなモミの木の枝にさげました。それからモミの木にも手紙を書きました。暖かくなってきたある日、皆からの返事が届きます。

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手紙のこと 片山令子

 手紙はよく書く方ではないかと思います。そしてそのたびに、送る相手がいるということは幸福だな、と思います。書いているうちにばらばらだった考えはまとまり、ただ過ぎるにまかせていた日々の出来事が便箋の上に確かなものになっていくのが感じられるからです。人に手紙を書ける、ということは、もうすでに相手から返事をもらったのと同じだと思っています。
 でもダイレクトメールの中に、なつかしい文字の封筒や葉書をみつけるのは、やはりうれしいものです。いつだったか、人からもらった手紙の束のために、沈んだ気分からぬけ出せたことがありました。
 物置き兼、仕事場にかりていた部屋に閉じこもって、古い手紙を一通ずつ読んでいるうちに、ずいぶん元気になって部屋から出てきたことがあります。こうやっていろいろな人がわたしに話しかけてくれている。だからだいじょぶ、とだんだん少しずつ、最後にはしっかり感じることができたのでした。
誰もいない部屋のテーブルの上に置いてあった、お母さんへ、という書き出しのメモもとってあります。面白いのは、それがいつもの話し言葉でなく、ですます調のていねいな文になっていることです。
 親しい者の間でも、時にはまっすぐに個人として向き合う必要があります。手紙を書くとそれが自然に出来てしまうのではないかと、わたしには思えます。
 以前、薄い詩のリーフレットを作り、手紙のように知人や友人に送っていたことがありました。手渡すわけではないので、おおかたのものは実際届いているのかいないのかもわかりません。でも四年がたち、それが詩集になった時、本をお渡ししたい、どうぞ来て下さいという文面の手紙を送ったら、送った人の総てがそろって来てくれたのでした。
 そして、わたしはこの絵本のひろこさんのようん、ほんとうにうれしかったのです。

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
32ページ
サイズ
19×26cm
初版年月日
1990年03月01日
シリーズ
こどものとも
ISBN
テーマ

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