小さな訪問者たち カズコ・G・ストーン
水辺にあおあおと草がしげり、涼しい風に柳の葉がさやさやとゆれ、そして、夕暮れになると薄紫色の空気の中で、どこからともなくあらわれたほたるが、草むらのそこここでピッカリピッカリ光っている。そんなところに住みたいなと想いながら『ほたるホテル』を描きました。
今、私はニューヨークに住んでいます。今年で二十二年目。大きな柳の木ではなく、摩天楼の林立するマンハッタン島。八階建てのビルディングで、九階は屋上です。そこに、りんごの木や野いちご、ブルーベリー、ラベンダー、パセリなどの草木を少し植えています。空から見たら、点ほどの緑だと思います。
それでも、夏になると、どこからかマルハナバチ、モナックチョウ、シオカラトンボなどが飛んできます。テントウムシやカマキリも、いつのまにか住んでいます。そして夜になると、木のデッキの下では、コオロギ(息子の飼っているカエルのえさ用のが逃げたもの)が、りーん、りりーんと、いい音色を聞かせてくれます。また、毎年、子孫を絶やさずにいて、もう何代目にもなる、トビハネさんみたいな緑色のバッタ一家もいます。七月末、夏たけなわのころになると、草花にポツポツと虫食い穴が出現、これがバッタ一家の襲名披露あいさつ状のようなものです。
何年か前の夏、七月四日の独立記念日に、恒例の花火大会にあわせて子どもたちと屋上で花火をしていました。線香花火の最後の小さな赤い玉がポトンと落ちたあとしばらくして、上の方でまだピカッと光るものがあるので、よく見たら、それは一ぴきのほたるでした。風で飛ばされてきたのでしょうか? それとも植木用の土に混じっていたさなぎが羽化したのでしょうか?
大都会のど真ん中の、ほんの少し緑があるだけの屋上でさえ、自然界からの訪問者があるということは、とても心がなごみます。
『ほたるホテル』は、『サラダとまほうのおみせ』(「こどものとも」94年11月号)に続いて、やなぎむらの虫たちのお話の二作目です。春、夏のお話に続き、今、秋の巻を制作中です。