とろーんとした夜の中から 西平あかね
水たまりに勢いよく突入する息子と、じわじわと靴を進めてゆく娘。2人の子どもを見ていると、「あ、その感じ知ってる」と思うことがたくさんあります。泥団子に砂をぱらぱらとまぶす感触や、ぬかるみを素足で踏んづけた時の感じ。子どもといると、子ども時代に引き戻されるようです。
そのうえ彼らは、“お母さんの小さいころの話”を毎晩聞きたがります。「もう全部、話はしたよ。覚えてないよ。もう寝ようよ」と布団をかぶって目をとじたのに、話が勝手に浮かび上ってきます。完全に忘れていた出来事が、不思議とするする出てきます。
「お母さんが子どものころに、友達の家に初めてお泊まりに行った話。いっぱい遊んでね、もう寝る時間だから、電気を消したの。暗くなったら、急に自分の家が遠い遠い闇の彼方に思えてね。外国ぐらい遠くに離れているみたいで、悲しかった」「お母さん、その時泣いた?」と息子。「うん。泣くから、家へ戻された。お泊まり、大失敗」「ふふふ、お母さんも泣き虫だったんだね」娘がうれしそうに笑いました。
帰りついた家の布団の中から、襖ごしの明かりと、アイロンをかけている母の姿を眺めた時の、なんともいえない安堵感。とろとろと夜の中に入ってゆくように眠ったことも、なつかしく思い出しました。子どものころの夜の、あの、とろ~んとした暗がりの中に、いいものをたくさん置き忘れてきた、そんな気もします。子どもたちは、私に忘れ物を探すように仕向けているのかもしれません。
さくぴーとたろぼうも、とろ~んとした夜の中から、ふわ~んとやって来ました。もちろん呼んだのは、うちの子どもたちです。