福音館書店

こどものとも年少版3号

きんぎょが にげた

こどものとも年少版|1977年6月号

「きんぎょがにげた」「どこににげた」……金魚鉢から逃げだしたきんぎょは、カーテンの模様の中に隠れたり、花の中に隠れたり。子どもたちの大好きな絵さがしの絵本。

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窓辺でうつら 五味太郎

昼下り、陽のあたる窓辺に置かれた水槽の中の金魚は、春がそのまま魚になったみたいにうらうらしています。歌の文句にあるとおり、いま昼寝の真最中、寝ごとのアワをプツプツ、見ているこちらもねむくなります。いつのまにかうつらうつら、あっ、飲みかけのお茶をひっくりかえした。おまえがそんなにうっとりしているから、見てるほうまでうっとり、うっかりしちゃうじゃないか。まったくこれはキンギョ迷惑というやつで……などとぼくもブツブツこごとのアワをだしたので金魚のやつ、冗談じゃない、うらうらしてるのは生まれつき、お茶をこぼしたのはおまえの不注意、変ないいがかりはよしてくれ、とばかり、ふっとどこかへ行っちゃいました。いいんです、いいんです、よくあることなのですから、ぼくの金魚、すねてすぐどこかへ隠れてしまいます。でもぼくはほうっておきます。金魚が隠れるところは、いつもだいたいきまっているんです。
そのうち、子どもたちがきっと見つけてくれるでしょうから、まかせておきましょう。おい、金魚がにげたよ、見つけておくれ、ぼくは春の陽ざしの中、そのままうつらうつらしています。
しま馬のしま、話はうつらうつらのまま変なほうにうつりますけど、しま馬のしまや、熱帯魚の模様みたいに派手なものが、彼らの生活圏では実に巧みなカムフラージュになるんだと聞いたことがあります。ですから他の場所へ、なんらかの都合でつれてゆくときは、それなりの色に塗りかえてやらなければ気の毒です。
食器戸棚の中に、また話は変わりますけど、ままごと遊びのカップが並んでいます。おもちゃ箱の中にお古のティ・カップがはいっています。どちらもお茶をいれて飲むことができます。どちらのカップもままごと遊びができます。さて、どちらがカップで、どちらがカップのおもちゃなのでしょう。これはむずかしい問題です。
いつだったか、たわわに実った柿の木に、リンゴをひとつぶらさげておいたことがあります。ぼくがニヤニヤして見ていると、やがて鳥がやってきて、あっちこっちの柿をつついて、ついでにリンゴもつついてそのまま飛んで行っちゃいました。彼はぜんぜんわかっていないのです。
ぼくはまだうつらうつらしています。金魚をさがしていた子どもがもどってきました。どうやら見つけたようです。子どもたちが、次はぼくがどこかに隠れろといいます。よし、隠れるゾ。ぼくは深々とベッドの中へ隠れます。

(1977年)

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
24ページ
サイズ
21×20cm
初版年月日
1977年06月01日
ISBN
テーマ

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