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くだものと私 平山和子
くだものを好きな人は多いですね。私もそのうちのひとりです。私は、「くだものをたべるよろこび」というものがあると思います。それは、加工されたり、料理されたものとちがって、自然のめぐみを、そのままたべることから感じられるものかも知れません。くだものを手にとってみると、色つや、形、かおり、感触など、こんなにみごとなものが、木や草になることの不思議を、あらためて感じます。私たちがたべているくだものの大部分は、原種ではなく、品種改良と、人手をかけた栽培の結果ではありますが――。
道を歩いていて、塀ごしに、くだものがなっている木をみつけると、何となくうれしくなります。また、山で、あけびやきいちごなどを取ってたべるのは、本当に楽しいものです。人間が、食物を採集していた、遠い時代の感覚を、呼びおこしてみたくなります。
りんごやかきを、まるごとかじるのも、野性的な感触が楽しみです。私は、りんごが、音をたてて、歯にほとばしる感じが好きで、今もときどき楽しんでいます。農薬の心配があるのが残念ですが――。そのりんごも、かつては、紅玉、国光が主で、ほかに、高級品が数種あるだけでしたが、このごろでは、より甘美な品種が、豊富に出まわって、楽しみがふえました。けれども、まるかじりする時は、やはり、紅玉か国光が似合うように思います。
この本には、ごく普通の情景として、フォークを使った場面がありますが、私は、子どもには、時と場合によって、くだものをまるごとあげて、好きなようにさせてみたいと思っています。幼児が、みかんを皮ごとかじったり、まだ、皮をむけないと思っていたのが、いつの間にか、ひとりでむいて、みかんをたべているのをみて、おどろいたことのあるお母さんは多いと思います。年令なりに、手と歯と頭を使って、くだものにとりくむのは、子どもにとって、興味深く、意味深いことだろうと思います。もともと人間は、どんなくだものの、どの部分がおいしいか、いつごろたべたらよいか、すべて、経験から知ったのでしょうから。
辞典に、「くだもの」とは、「食用になる草木の実」とあります。すいかといちごは、野菜に分類される場合(農林省発行の統計表など)があります。けれども、私たちは、日常、これらをくだものとして扱っていますし、また子どもにもっとも親しまれているくだものなので、この本にのせました。
基本情報
- カテゴリ
- 月刊誌
- ページ数
- 24ページ
- サイズ
- 21×20cm
- 初版年月日
- 1979年07月01日
- シリーズ
- こどものとも年少版
- ISBN
- ー
- テーマ
- ー
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