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おにぎりのかたち 平山英三
おにぎりは、ごはんを手で握っただけの素朴なたべものです。
おにぎりのかたちや大きさは、地域や用途や人によってちがいますが、大きくわけると、球形・やや扁平な球形・厚みのある三角形・俵形などです。どのかたちも簡潔です。
おにぎりを作る様子を見てみます。手のひらに、水をつける。塩をつける。ごはんを、手のひらにのせる。
ぎゅっと握る。
くるっ、くるっと回転させる。
二つの手は、正確な動きで呼応します。手のひらは、かたまっていくごはんのしまりぐあいを計ると同時に、かたちを整えています。やがて、しまりぐあいとかたちが瞬時に決定され、おにぎりが出来上がります。これらの工程は、すべて、手のひらの機敏な動きと判断によります。その様子を見ていると、おにぎりは手のなかではずみ、いきいきと動く手は、その手ごたえをたのしんでいるようです。
このおにぎりの作りかたを、言葉でつたえることが出来るでしょうか。ごはんの分量、握力のかけかた、握る回数、何秒間握るか、などのことはおにぎりの作りかたとして、数値でつたえることは出来ません。手が学び、経験することによってのみ可能です。握る回数などを意識すれば、手の動きは、たちまち自然さを失うこととおもいます。おにぎりは、手が作ります。
皿にのった、出来たばかりのおにぎりは、よく見ると、一個一個のかたちが少しずつちがっています。それでいて、どれもふっくらとして、温かなかたちをしています。手だけで作られた最も素朴なかたちです。
おにぎりのかたちと表情について、印象深い光景に出会ったことがあります。
ある夏の朝、一家で山へ行くというので、台所ではおにぎりが作られていました。皿の上におにぎりが一つずつふえていくのを見ながら、私は子どもと山行きのしたくをしていました。ふと見ると、窓際に皿がうつされていました。丁度、そこに朝日がさしこんで、ならんだおにぎりは白く輝いていました。それは、生まれたばかりのおにぎりが、朝日の祝福を浴びているようでした。
この時の、強い印象がこころにあって、おにぎりの絵本へとふくらんでいきました。
基本情報
- カテゴリ
- 月刊誌
- ページ数
- 24ページ
- サイズ
- 21×20cm
- 初版年月日
- 1981年06月01日
- シリーズ
- こどものとも年少版
- ISBN
- ー
- テーマ
- ー
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