福音館書店

こどものとも年少版76号

いってきまあす!

こどものとも年少版|1983年7月号

くまくんがひとりで散歩にでかけます。柵をくぐり、砂山を越え、ベンチを渡り、石垣の上を歩いたら、降りられなくなってしまいます。幼いこぐまの大冒険です。

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ひとり歩き 渡辺茂男

 わたしは、幼年時代、ひと一倍からだが弱かったせいか、外で遊ぶのがきらいでした。きらいというよりも苦痛だったのかもしれません。
 幼稚園にはいる前には、年のはなれた元気な兄たちといっしょに、外で遊んだ記憶がほとんどありません。八才年上の姉にせおわれたり手をひかれたりして、姉のいくところについていくのがやっとのことで、あとは家のあがりかまちにすわりこんで、外をながめてばかりいたような気がします。
 ですから家から二キロメートルほどはなれたところにある幼稚園にはいってからは、歩いて通うのがとてもつらく、毎朝、きびしい父にはげしくしかられ、泣き泣き歩きだしたものでした。泣きながら歩き、ふりかえると、父がこわい顔をしてつっ立ったまま、わたしを追いやるように手をふっていました。かどをまがって父の姿が見えなくなっても、父の視線を背中に感じました。
 足が弱くてころんでばかりいるわたしを、幼稚園の先生は、「茂男ちゃん、おひざをお大事に!」といって、幼稚園を送りだしました。長い道のりに足が痛くなってしゃがみこんでいると、父がどこからともなく自転車にのってあらわれ、片手でわたしをだきあげて、荷台にまたがらせました。
 父は、わたしの体力の限界がきてへたりこむまで、遠くから見守っていたのでしょう。そうだったに違いありません。
 元気に育ったわたしの子どもたちが、ひとり歩きをはじめたとき、わたしは、見えがくれにあとをつけながら、父のことを思いだしていました。

(1983年)

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
24ページ
サイズ
21×20cm
初版年月日
1983年07月01日
ISBN
テーマ

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