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ひとり歩き 渡辺茂男
わたしは、幼年時代、ひと一倍からだが弱かったせいか、外で遊ぶのがきらいでした。きらいというよりも苦痛だったのかもしれません。
幼稚園にはいる前には、年のはなれた元気な兄たちといっしょに、外で遊んだ記憶がほとんどありません。八才年上の姉にせおわれたり手をひかれたりして、姉のいくところについていくのがやっとのことで、あとは家のあがりかまちにすわりこんで、外をながめてばかりいたような気がします。
ですから家から二キロメートルほどはなれたところにある幼稚園にはいってからは、歩いて通うのがとてもつらく、毎朝、きびしい父にはげしくしかられ、泣き泣き歩きだしたものでした。泣きながら歩き、ふりかえると、父がこわい顔をしてつっ立ったまま、わたしを追いやるように手をふっていました。かどをまがって父の姿が見えなくなっても、父の視線を背中に感じました。
足が弱くてころんでばかりいるわたしを、幼稚園の先生は、「茂男ちゃん、おひざをお大事に!」といって、幼稚園を送りだしました。長い道のりに足が痛くなってしゃがみこんでいると、父がどこからともなく自転車にのってあらわれ、片手でわたしをだきあげて、荷台にまたがらせました。
父は、わたしの体力の限界がきてへたりこむまで、遠くから見守っていたのでしょう。そうだったに違いありません。
元気に育ったわたしの子どもたちが、ひとり歩きをはじめたとき、わたしは、見えがくれにあとをつけながら、父のことを思いだしていました。
基本情報
- カテゴリ
- 月刊誌
- ページ数
- 24ページ
- サイズ
- 21×20cm
- 初版年月日
- 1983年07月01日
- シリーズ
- こどものとも年少版
- ISBN
- ー
- テーマ
- ー
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