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子どものこころの家 征矢 清
子どもは、だれのものでもない自分だけの家を、ちゃんと持っています。そこではその子は、自分の思うままに心をはたらかせ、自分の存在を主張できます。その家は、大人では気づかない小さなしげみの中のかくれ家だったり、おもちゃ箱や絵本の世界だったりします。そしてそれは、大人の目にどんなにつまらなく小さなものに見えようと、子どもにとっては暖かく心安まる部屋にも匹敵するものです。
さらにそれが、木や草や土の匂いを感じさせてくれる自然の中に見つけられたとき、子どもはどんなに幸せなことでしょう。その自然の家の中には、なんと多く共感するものがあるでしょう。ほんのわずかのスペースでも、土は草の芽を生み、子どもの足もとから子どもに語りかけます。「いまはちっちゃいけど、これから大きくなるんだよ」と。子どもはうなずきます。「わたしだって、これからもっと大きくなるんだもの」。
小さな虫たちもこの家の住人です。雨さえしのいでくれる葉のしげみの中で、これはお互いが自己主張しあう同居人というところでしょうか。でも結局は、虫よりも大きく知恵も力もある子どものほうが、思いやりを示すことになります。「こっちの葉っぱにとまったほうがいいよ」「ほら、もっと奥のほうがぬれないよ」と、子どもが声をかけてやることになります。
やはり、この家の主は子どもなのです。この家で、子どもはだれからも指示されることなく、自分の内部から出てくる言葉で対話します。自分自身の心から自然に湧いてくる言葉でおこなわれる対話のはじまりは、こんなところにあるのではないかと、わたしはこの小さなお話を書きました。
この小さなお話のために描かれた絵を見て、私はやられたと思いました。画家の林明子さんは、わたしの頭になかった水玉のきらめきを、草やくもの巣の上に美しく表現していたのです。子どもの視点でとらえた、絵の中の虫たちの陽気さにも感謝したい気持です。絵の中にすでに、心の対話がとびかっているのですから。
基本情報
- カテゴリ
- 月刊誌
- ページ数
- 24ページ
- サイズ
- 21×20cm
- 初版年月日
- 1985年04月01日
- シリーズ
- こどものとも年少版
- ISBN
- ー
- テーマ
- ー
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