福音館書店

こどものとも年少版231号

かさ かしてあげる

こどものとも年少版|1996年6月号

雨が降ってきました。傘を持っていないなっちゃんが、困って道ばたで立ちすくんでいると、「かさ かしてあげる」と、ありさんがクローバーの傘を持ってやってきました。続いてかえるさんが、ゼラニウムの葉を持って登場。その後、うさぎさん、たぬきさん、くまさんが、それぞれ人参、さといも、ふきの葉っぱを貸してくれます。最後は、犬のジョンが、なっちゃんの赤い傘を持ってやってきて、傘の行列に花を添えます。

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雨の日は 楽しいことがいっぱい 小出 保子
 
 コンクリートの建物では雨の音が聞こえません。濡れた道を見おろして「アレ? 雨?」と驚くことがたびたびあります。雨の音が聞こえないのは趣がなくて残念ですが、私の住んでいる団地には小さい子たちもたくさん住んでいて、雨の日にはとりわけ楽しいことが起こるのです。
 ある雨の日。ギャーギャー騒ぐ子どもたちの声が、ぱたっと跡絶えたので窓から見おろすと、さまざまな色の傘が集まって傘の家ができていました。傘のなかからは「イッヒッヒ」「ケッケッケ」と笑い声がして、ワクワクした雰囲気が伝わってきます。やがて鼻をすする音もやみ、傘のなかはひっそりと静かです。皆で空想の国へ飛んでいってしまったみたいでした。
 また、ある雨の日。「おーい、だれかでてこい!」どら声で叫んでいるのはケンタ君です。雨は降っているし、腕白ケンタ君は恐いしで、誰も外へ出てきません。「おーい、おともだち、でてこい」
 少しサービスしても誰も出てきません。すると、ケンタ君は水たまりを見つけて、そろりそろりと渡り歩きました。それから黄色い傘で雨水をすくってまきちらし、傘に風を受けて水たまりのなかをバシャバシャ走りまわり、水の入った長靴を脱ぐと雨水をすくって自分の頭にかけたのです。当然、小さな身体は冷えきり、あっというまに水たまりのなかにオシッコです。さすがの腕白もここまでだろうと、妙にほっとしていると、たちまちにその水たまりのなかを泳ぎはじめ、腹ばいになって手足をバタバタやっているところを、お母さんに見つかって連れさられました。「もう着替えがないわよ」とお母さんの声がしました。
 雨上がりのある日。三人の男の子が三輪車で遊んでいると、黒い服の若い女の人が傘をさしてやってきて仲間に加わりました。逃げる三輪車を追いかけて皆々大騒ぎでしたが、とうとう女の人が追いついて三輪車を貸してもらったようでした。ところが、小さな三輪車に大人の女の人が乗るには技術がいるようです。またまた大騒ぎがはじまりましたが、突然一人の男の子が「おねえちゃん、どこからきたの?」と聞いたのです。すると、女の人は傘を高々と上げて「空から!」といったのです。「どうやって、おうちにかえるの?」別の子が聞くと「傘で!」女の人はそういうと「さよなら」と傘を振り、ハイヒールの音をカタカタさせて行ってしまいました。男の子たちは、しばらくぽかんと空を見上げていました。
 なんだか、すごくいいものを見たような気がする。──私も空を見上げました。
 自然の恵みのなかで、人ものびのびとするのでしょうか。雨の日は、面白いことがいっぱいです。

(1996年)

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
24ページ
サイズ
21×20cm
初版年月日
1996年06月01日
ISBN
テーマ

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