わすれものの かさ

こどものとも年少版|2025年6月号

公園に忘れ物の傘がありました。だれも探しにきてくれないので自分で家まで帰ることにした傘は、ぱっとからだを広げて、カトコトタタタと転がり出します。坂があっても、川があっても、だいじょうぶ。見えたよ見えた、赤い屋根。家につくまで、もう少し――。リズミカルな言葉にのって進む傘の旅を、躍動感のある絵で描いたお話の絵本です。

  • 読んであげるなら
    2才から
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作者のことば

迎えに行くね
こさか まさみ

何年も前、地下鉄の中に古い折りたたみの傘を置き忘れてしまいました。駅に問い合わせると、その電車は終点の駅に向かっており、そちらに聞いてくれと言われました。頃合いを見計らって電話を入れると、私の傘は事務所にあるとのことで、数日以内に取りに行く約束をしました。

その話を友だちにしたところ、彼女いわく、「私だったら行かないわ」。

傘が保護された終点の駅は、地下鉄から他の路線に乗り入れた先の隣の県の駅。時間にして片道40~50分、電車賃も500円以上。

「いい? 家からその駅まで往復約2時間、電車賃が往復で1000円以上。仮に時給1000円で2時間働いたら、2000円。電車賃と合わせて3000円よ。時間もお金ももったいないし、それだけの価値のある傘なの? 私だったら、新しいのを買うわ」

彼女の自信満々な意見に「そうねぇ……」と押し切られるように答えて電話を切りました。

でも、やはり、私は傘を迎えに行きました。

なぜなら、事務所の棚の上から私の姿を探している傘の姿、真夜中の暗い部屋の中で心細い気持ちを抑えてじっと待っている傘の姿、そんな悲しげな様子が次々と心に浮かんでくるのです。単なる想像でしかないのは、十分わかっていますが、せっかく見つかった傘を見捨てるわけにはいきませんでした。

戻った傘は、しばらく使って壊れてしまいました。けれども、私はそれで満足です。

私は、忘れん坊で、それなのにあきらめが悪いのです。あるとわかれば、迎えに行きたいのです。私の持ち物全てが、それを心得てくれて、この『わすれものの かさ』のように、自力で戻ってきてくれたらなあ、と思います。

基本情報

カテゴリ
月刊誌
ページ数
24ページ
サイズ
21×20cm
初版年月日
2025年06月01日
ISBN
テーマ

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