オオコウモリの にぎやかな よる
かがくのとも|2025年6月号
沖縄には、昼間高い木の枝にぶらさがって寝ているオオコウモリがいます。日が暮れると、ねぐらを飛び立ったオオコウモリが、実をたくさんつけたガジュマルの木につぎつぎと集まってきました。オオコウモリどうしが近づきすぎるとキーキー声をだして争いになることも……。ごちそうをたくさんつけたガジュマルの木を舞台に、オオコウモリの一夜のようすを描きます。
- 読んであげるなら
5・6才から - 自分で読むなら
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かがくのとも|2025年6月号
沖縄には、昼間高い木の枝にぶらさがって寝ているオオコウモリがいます。日が暮れると、ねぐらを飛び立ったオオコウモリが、実をたくさんつけたガジュマルの木につぎつぎと集まってきました。オオコウモリどうしが近づきすぎるとキーキー声をだして争いになることも……。ごちそうをたくさんつけたガジュマルの木を舞台に、オオコウモリの一夜のようすを描きます。
大きなコウモリ
伊澤雅子
今回の主役は、沖縄島にすむオリイオオコウモリという大きなコウモリです。首に襟巻きのような毛があるクビワオオコウモリの亜種です。
世界に1000種以上がいるコウモリ類は私たちと同じように哺乳類です。哺乳類の中で唯一、飛べる能力を進化させて、空という新しい場所へ進出していったユニークな動物たちです。鳥ではなく哺乳類なので、卵ではなく赤ちゃんを産んでおっぱいで育てます。翼も鳥の翼と違って、人間で言えば皮膚に当たる薄い黒い膜です。でも、逆さまにぶら下がっていることなど他の哺乳類とは違うコウモリならではの特徴も持っています。
実は、コウモリの仲間には小型コウモリとオオコウモリがいます。小型コウモリの多くはツバメぐらいの大きさですが、オオコウモリは翼を広げると差し渡しで1~2メートルにもなります。でも、単に大きさが違うというだけでなく、暮らし方も違います。小型コウモリは超音波を使って周りの物を「見て」、昆虫を食べます。洞窟にすんでいる種も多いです。でも、オオコウモリは私たちと同じように目で物を見て、植物を食べます。果物、葉っぱ、花、蜜などです。昼間は高い木の上の方にぶら下がって寝ています。小型コウモリは顔には小さい目と短い鼻、種によっては独特のヒダのような構造を持っていますが、オオコウモリは大きな目と長い鼻を持っています。イヌのようです。なので、英語ではフライング・フォックス(空飛ぶキツネ)と呼ばれています。
日本ではオオコウモリは南西諸島と小笠原諸島だけにいます。沖縄の人にとっては、オオコウモリはどこにでもいる動物で、庭に来ることもあります。私たちが沖縄で小型コウモリについての聞き取り調査をすると、「小さいコウモリは見ないね。普通のコウモリならいるけどね」とか「小さいコウモリ? コウモリの子ども?」とか言われます。「普通の」コウモリがオオコウモリなのです。沖縄や小笠原以外のところに住む人にとっては、夕方街灯の周りをひらひら飛んでいる小さなコウモリ(多くはアブラコウモリ)が普通のコウモリだと思います。
コウモリは夜に飛ぶ黒い動物で、有名なドラキュラ伝説に出てくることからも「気持ち悪い」「怖い」動物であるかもしれません。でも、吸血コウモリは南米にすむ種だけで、しかも野生動物の皮膚にちょっと傷をつけて血を舐めるという、蚊のようなものです。もちろん日本にはいません。小型コウモリはとてもたくさんの小さな虫を食べることから害虫の駆除に役立っています。オオコウモリは植物の花粉を媒介したり、種子を運んだりして、森林を維持するのに役立っています。生態系の中で重要な役割を持つ動物なのです。
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