日々の絵本と読みもの

うさこちゃんの誕生『ちいさな うさこちゃん』

『ちいさな うさこちゃん』
 
うさぎのふわふわさんと、おくさんのふわおくさんは仲良く暮らしています。
ある日、ふわおくさんのところに天使がやってきて、かわいい赤ちゃんが生まれました。ふたりは赤ちゃんに「うさこちゃん」という名前をつけました。
たくさんの動物たちがうさこちゃんを見にやってきます。ひよこをつれたにわとりや太った牛までいます。
「ふわおくさんに ふわふわさん おはようございます あかちゃんが おうまれになって おめでとう」と動物たちはお祝いの言葉を贈るのです。

この、うさこちゃんのおはなし、日本では1964年に石井桃子さんの訳で出版されたのですが、ブルーナさんの絵本の翻訳を刊行したのは実は日本が初めてだったそうです。そのあとにヨーロッパ各地で刊行されるようになりました。
当時、編集者だった松居直は、「うさこちゃん」をはじめて見たときブルーナさんの絵の「正面性」に驚き、すぐに出版を決めたといいます。どの絵本も、動物、人、家や草花までもが、しっかりと正面を向いていて、子どもたちの視線をとらえてはなさないからです。
 
「翻訳は石井桃子さんしかいない。石井さんは子どもに本当に語りかけるという感覚を持っていらした」と松居は語っています。「ナインチェ(うさぎちゃん)・プラウス(ふわふわ)」というオランダ語の語感を活かして名づけられた「うさこちゃん」は、まさに日常の日本語の感覚で、赤ちゃんに向けた初めての絵本シリーズとして誕生しました。
 

うさこちゃんの誕生を描く『ちいさな うさこちゃん』に加え、初めての海へいく『うさこちゃんと うみ』、動物園で色んな動物と交流する『うさこちゃんと どうぶつえん』、そして雪あそびをする『ゆきのひの うさこちゃん』の4冊は『1才からのうさこちゃんの絵本①』としてセットにもなっています。ご出産やお誕生日のお祝いとしてもおすすめできます。


いずれの作品も、絵本を読んでもらうこどもたちの目をしっかり見ている、うさこちゃんの一日を描いています。最後には疲れて眠ってしまううさこちゃん。その姿も、初めての体験も、赤ちゃんにとっては読み聞かせてくれた大人の声とともに、とても心地の良い時間になるのではないでしょうか。

担当A・うさこちゃんの言葉遣いが丁寧でとても素敵です。

2023.01.05

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