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鎌倉舞台の幻想ファンタジー『かはたれ 散在ガ池の河童猫』『たそかれ 不知の物語』

かはたれ 散在ガ池の河童猫』『たそかれ 不知の物語
「かはたれ」とは……。夜明けのおぼろげな光のなかで、かれはだれか見分け難いとき、の意味。「彼(か)は誰(たれ)」。かわたれどき。古くは夕暮れどきもこう呼ばれていました。
この物語は、幼い河童と小学生の女の子が、美しく儚い「かはたれ」のときをさまよいながら、少しずつ成長していくようすを描いた幻想的な物語です。

舞台は、鎌倉の人里に程近い山の中。そこには、「散在ガ池」と呼ばれる池や沼があり、河童族の生き残りが静かに暮らしていました。けれども、次第に山の宅地化が進む中、河童族の縄張り争いがはじまり、幼い河童の八寸は山奥の小さな沼にひとりだけ残されてしまいます。

河童族が生きていくために一番大事にしている霊力は、人間の心を読む力。ある満月の夜、河童族の長老は、修行のために八寸を子猫に変え人間世界に送り込むのでした。

初めて目にする犬や車にびくびくしながら住宅街をさまよう子猫の八寸。そうして出会ったのは母親を亡くしたばかりの麻(あさ)という寂しげな小学生の女の子でした。同じ屋根の下、ふたりの心は少しずつ近づいていきますが、ある日、麻は、八寸の本当の姿を見てしまいます……。


これまで、亡き母にたよってばかりいた麻は、ひとりぼっちの河童の八寸と出会うことで、初めて心が動きだし、内側にある大切なものに気づいていくのでした。
児童文芸新人賞、日本児童文学者協会新人賞を受賞した朽木祥さんの、心温まる本格的ファンタジーです。

続編は『たそかれ』です。「たそかれ」とは、たそがれの夕暮れどき。薄暮の中でかれはだれか見分け難くて「誰(た)そ彼(かれ)」と問うとき、の意味。古くは「かはたれ」とも呼ばれました。
『かはたれ』の物語から4年が過ぎ、麻は中学生になり、そこへ成長した八寸がやってきます。目的は、中学校の古いプールに棲みついてしまった高貴な血筋の若き河童、不知を河童界に連れもどすこと……。不知の力によって過去を旅する、スケールの大きなタイムファンタジーになっています。

どうぞ、山内ふじ江さんの素敵な挿絵とともに、『かはたれ』『たそかれ』の2巻あわせてお楽しみください。

担当S 作中には、鎌倉で有名な「切通」「やぐら」「谷戸(やつ)」「落ち武者の道」などが登場します。読後、あらためて鎌倉を散策したくなる物語です。

2023.10.20

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