日々の絵本と読みもの

かつてない絵本体験へといざなう「字のない絵本」『Michi』

かつてない絵本体験へといざなう「字のない絵本」

『Michi』

厚さが2センチを超える重厚な本。画集を思わせるその表紙をめくると、大きな鍵穴の付いた扉のノブが描かれています。子どもならずとも、鍵穴を覗いたりノブを回してみたくなります。そして、ページをさらにめくると、まっすぐに前を見つめる子どもの後ろ姿が。その前には真っ白な道が続いています……。大地をしっかりと踏みしめて凛々しく立つ子どもの後ろ姿からは、これからひとりで未知なる世界への一歩を踏み出す決意が感じられます。

目の前の白い道を歩き出す子どもの姿を見ながらページをめくると、突然、めまいがしそうなほど色鮮やかな町並みが広がります。緑に囲まれた美しい町では、老若男女がそれぞれの過ごし方でのんびりと生活を楽しんでいます。見るものをひきつけてやまない町の風景。そして、建物の合間を縫って縦横無尽に白い道が伸びています。

ページをめくるたびに、色使いの違うあたらしい町があらわれます。それは、ときに蒸気機関車を模したような町であったり、本を積み上げたような町であったり。大きな樹上の町もあれば、海の中や宇宙空間まで、町はさまざまに広がっていきます。繊細に描かれた町の様子は、さながら幻想的なラビリンス(迷宮)のよう。どの町にもそこに暮らす人たちが細かく描写されていて、町の造形美とあわせて見飽きることがありません。ひとつひとつの町を訪ねて歩き続ける子どもの姿にいざなわれて、読者もまた、白い道をたどりながら、町のあちらこちらを旅してまわることでしょう。


じつはこの絵本、左からページをめくれば男の子が、右からめくれば女の子が、未知なる一歩を踏み出す仕掛けになっています。それぞれが不思議な町の数々を旅して、本の真ん中でふたりは出会います。その後のふたりは? 友だちになるのか、単にすれ違うだけなのか、それはわかりません。町並みの楽しみと同様に、これも読者のイマジネーションにゆだねられています。

これまでも、美しい画集や華麗なコマーシャルアートで根強い人気を誇っていた作者のjunaida(ジュナイダ)さんが、あえて初めての「絵本」として世に問う作品。「道」でもあり「未知」であるともいえるダブルミーニングのタイトルからは、作者自らのこの絵本に込めた思いも伝わります。

子どもでもおとなでも、見るものをかつてないあたしい絵本体験へといざなう『Michi』の世界へ、あなたも一歩を踏み出してみませんか?


※『Michi』関連イベント情報
●11/21から11/26まで、東京・南青山「TOBICHI2」で『Michi』原画展を開催します。(終了いたしました)

●11/22から12/25まで、東京・代官山蔦屋書店でjunaida展「未知なる道を開催します。

●12/1から12/25まで、京都・Hedgehog Books and Galleryで、『Michi』原画展を開催します。

また、11/21より、「ほぼ日刊イトイ新聞」にて、
junaidaさんと制作チームへのインタビュー記事
アイディアのたどる、未知の道。
ー junaidaさん最新作『Michi』はいかにして「絵本」になったか ー」
が掲載されます。





「日々の絵本」水曜担当・Y
チームふくふく本棚の長老。趣味は、お酒と野球とトロンボーン。

2018.11.21

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