日々の絵本と読みもの

新しい友達と出会うことのよろこび『とん ことり』

新しい友達と出会うことのよろこび

『とん ことり』

入園、入学、そして引っ越し。これまで一緒にいたお友達と離れ、新しい環境に飛び込むのは、わくわくすると同時に、すこし心細いことでもありますよね。絵本『とん ことり』の主人公・かなえも、そんな気持ちを味わったひとり。引っ越し先で新しい友達ができるまでを描いたお話をご紹介します。

かなえは、山の見える町に引っ越してきました。新しいおうちに着くと、お父さんとお母さんは荷物の整理を始めます。お手伝いに疲れて休んでいたかなえの耳に、玄関のほうから「とん ことり」と小さな音が聞こえます。「ゆうびんやさんの おとがした」と思ったかなえが玄関を見に行くと、郵便受けの下にすみれの花が落ちていました。

次の日も、そのまた次の日も「とん ことり」と音がして、たんぽぽやお手紙が届きます。

「これは あたしに きた てがみよ。ぜったい そうに きまってる!」

すみれ、たんぽぽ、手紙……いったい誰が届けてくれたんでしょう。かなえはそのことばかり考えてしまいます。そしてまた「とん ことり」と小さな音が。「まって、まって! まってよう!」と大きな声で叫びながら、かなえは玄関に飛び出しました。ドアを開けるとそこにいたのは……?

新しい町に引っ越してきたかなえの心情を細やかに描いたのは、『はじめてのおつかい』の筒井頼子さん・林明子さんの名コンビ。不安げなかなえの表情が、最後には満面の笑顔に変わり、読んでいる側も思わず微笑んでしまうような、心温まる絵本です。
そして、最後まで読んでからもう一度絵をじっくり見てみると、手紙の送り主がいろいろなところにひっそり隠れていたり、どこかで見たことがあるような顔が見つかったりと、絵を見る楽しさもたっぷりです!


担当・T
『とん ことり』を読むと、転校した時の不安な気持ちと、新しい友達ができたときのうれしさを思い出します。

2021.04.02

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