新刊『どんぐり喰い』試し読み公開中!
2021年11月新刊『どんぐり喰い』は、スペイン内戦終結から間もない時代、スペイン・アンダルシア地方で、貧しくもたくましく生きる少年の生活と成長を描いた物語。オランダを代表する児童文学作家であるエルス・ペルフロムさんが、スペイン出身の夫の少年時代を基に描き、オランダで最も優れた児童文学に贈られる「金の石筆賞」を受賞した一冊です。
邦訳版の刊行を記念して、本作の第1章「森」を期間限定で公開いたします。伝統的な生活が息づくアンダルシア地方を舞台に、少年の喜びや悲しみを鋭い感性で描き出した作品を、ぜひこの機会に読んでみてください。
作品について
主人公の少年クロは貧しい家計を助けるため、学校をやめて働きに出る。豚やヤギの世話、建築現場の下働き……。内戦終結からまもないスペイン・アンダルシア地方で、人々は貧しさや社会の不条理に耐えながらも誇り高く生き抜き、クロもまた、たくましく成長していく。
著者 エルス・ペルフロムさんからのメッセージ
邦訳版の刊行によせて、著者のエルス・ペルフロムさんより、日本の読者に向けて、メッセージが届きました。
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日本でこの本が出ることを、私はとても嬉しく思っています。この本に書いたのは、私の二人目の夫、クロの子ども時代の話です。市民戦争後の長期間にわたる独裁者のフランコ政権のもと、貧富の差に苦しめられた、「飢餓の子どもたち」と呼ばれる世代の話です。時代がどれほど変わっても、世界では、今も多くの子どもたちが同じような境遇に置かれていることが私の頭から離れません。クロは勇敢でした。生まれてからずっと働き詰めだったのに、機会さえあれば人生を楽しみ、友人や周囲の人に愛されていました。日本の読者の皆さんがこの本の中に自分の経験と重なる部分があるかどうか、共感できるかどうか、またいつか教えてください。***
エルス・ペルフロム
1934年、オランダのアルネムに生まれる。翻訳や地元紙の編集などに携わったのち、1977年、『第八森の子どもたち』(福音館書店)を発表。オランダで毎年最も優れた児童文学に贈られる「金の石筆賞」を受賞する。85年には『小さなソフィーとのっぽのパタパタ』(徳間書店)で、90年には本作『どんぐり喰い』でと、三度にわたって「金の石筆賞」を受賞している。94年には、これまでの業績に対して、「テオ・タイセン賞」(青少年文学のための国家賞)」を贈られた。
訳者・野坂悦子さんの特別エッセイ
邦訳版の刊行にあわせて、訳者の野坂悦子さんにも、特別エッセイをよせていただきました。スペイン、オランダ、そして日本へと長い旅路を経てきた作品と向き合った日々、翻訳をするなかで考えられたことについて綴ってくださっています。ぜひ作品とあわせてお楽しみください。
野坂悦子(のざか・えつこ)
1959年、東京に生まれる。早稲田大学第一文学部英文学科卒業。1985年から5年間、フランス・オランダに暮らす。現在、オランダ語の子どもの本の翻訳やオランダ文化の紹介を中心に活躍。訳書に『おじいちゃん わすれないよ』(金の星社、第50回産経児童出版文化賞大賞)、『ミスターオレンジ』(朔北社)、『おいで、アラスカ!』(フレーベル館)、『第八森の子どもたち』『ばらいろのかさ』『ちいさな かいじゅう モッタ』(福音館書店)など多数。創作した絵本に『ようこそロイドホテルへ』(玉川大学出版部)、紙芝居に『やさしいまものバッパー』(童心社)などがある。