日々の絵本と読みもの

つかわないんなら、あたまなんかもってたって、なんのやくにもたちゃしない ! 『あたまをつかった小さなおばあさん』

小さな黄色い家に住む小さなおばあさんは、日々の暮らしのちょっとした不便や困ったことを、頭を上手に使って(ときにはとんちんかんに見えるやり方で)、切り抜けます。そんなおばあさんの季節を巡る短編集を3冊ご紹介します。

『あたまをつかった小さなおばあさん』
質素な暮らしをしているおばあさん、お金のかかる羽ぶとんを買う代わりに、がちょうを12羽買いますが、羽をむしったらがちょうが寒くてかわいそう! ぬれタオルで頭をしばり、人差し指を鼻の横にあてて目をつぶり、一生懸命に頭を使い考えます。そして、問題が解決すると「かしこかったねぇ」と自画自賛! そんな前向きなおばあさんはとってもチャーミングで、1970年に刊行後、多くの子どもたちに読み継がれてきました。


1作目の刊行から約50年の時を経て2019年に刊行されたのが、続編の『あたまをつかった小さなおばあさん がんばる』と続々編の『あたまをつかった小さなおばあさん のんびりする』です。

『あたまをつかった小さなおばあさん がんばる』

冬の間頭を休めていたおばあさんが春になりパワーアップして、色々な問題をあっと驚く方法で解決していきます。
イースターにかぶるよそゆきの帽子が古びてくたびれているのに気がついたおばあさんは、古い帽子をきれいに洗って、庭のチューリップを摘んで帽子に飾りつけます。そのかわり、庭には布のはぎれで作ったチューリップを植えご満悦です。サーカスを見に行ったり、夏を涼しく過ごしたり、クリスマスツリーを飾ったり……問題を解決するたびに「わたしがあたまをつかったおかげだよ。つかわないんなら、あたまなんかもってたって、なんのやくにもたちゃしないものね。」とおばあさん。

『あたまをつかった小さなおばあさん のんびりする』

3作目ではとうとう解決すべき問題もなくなってしまいました。浮いた時間をどうやってすごそう? と頭を悩ませるおばあさんのもとに、占い師がやってきて余暇の使い方を指南してくれます。占い師の予言によるとおばあさんは「陸の上をここかしこ、上り下り、水の上をあっちこっち、旅行する」というのです。それを聞いたおばあさんは、さっそく入念に旅行の準備をはじめます。旅先でどんな天気になってもいいようにと、ミトン、マフラー、ドレス、エプロン…。食べものも、パン、こうし肉、ジャム、ゼリーと、荷物はどんどん増えていきます。さらに、がちょうやねずみたちにも紐を結び付けて、旅行に連れていこうとするからさあ大変! 果たしておばあさんは旅行に出かけられるのでしょうか?



続編、続々編は、長らく未訳のままでしたが、ある雑誌のインタビューをきっかけに、松岡享子さんがあらためて2冊を読み返され、その面白さを再発見されたのが2019年刊行のきっかけとなりました。絵を描かれたのは降矢ななさん。1作目の山脇百合子さんによるおばあさん像を踏襲しつつ、たくましくパワフルなおばあさんを描いてくださいました。
決して贅沢をせず、家にあるものを大切に工夫して使って問題を解決し、毎日ごきげんで楽しく生きている、ポジティブなおばあさんの姿は、読んだ人を楽しい気持ちにしてくれます。短いお話とかわいい挿絵で、読み聞かせも、自分で読むのにもぴったりです。そして、こんなおばあさんになりたいなぁと思う大人や、おばあさんと同世代の人にも、多くの人におすすめしたい作品です。

刊行時には、東京子ども図書館で松岡享子さんと降矢奈々さんの講演会が開催されました。当時の様子をこちらからご覧いただけます。

担当A:前向きで、ごきげん、元気なおばあさんの姿にパワーをもらえます!

2023.09.13

  • Twitter
  • Facebook
  • Line

関連記事