日々の絵本と読みもの

だるまちゃんの愛すべきお父さん「だるまどん」『だるまちゃんとてんぐちゃん』

『だるまちゃんとてんぐちゃん』

1967年に刊行された『だるまちゃんとてんぐちゃん』。だるまちゃんとそのお友だちは、50余年もの長い間、多くの子どもたちに愛され、いまや親子3代で楽しんでいる方もいらっしゃるという、うれしい声も寄せられています。お友だち、ものづくし、遊びなど、見どころたっぷりの絵本ですが、だるまちゃんのお父さん・だるまどんとのかけあいも、楽しい絵本です。

だるまちゃんは、友だちのてんぐちゃんの持っているものを何でも欲しがります。はじめに、だるまちゃんが「てんぐちゃんの ような うちわが ほしいよう」とお父さんのだるまどんにねだると、だるまちゃんのことがかわいくてしょうがないお父さんは、それはそれはたくさんのうちわを出してくれました。

でも、だるまちゃんは「こんな うちわじゃ ないんだけどな」と、どれもほしいものとは違うようです。だるまちゃんは考えているうちに、いいことを思いつきました。ヤツデの葉っぱをうちわにしてみたら、満足のいくものになりました。てんぐちゃんにも「ずいぶん いいもの みつけたね 」と、感心してもらえました。

ところが、今度はてんぐちゃんがかぶっている帽子がうらやましくなって、同じようにお父さんにねだります。おねだりは続き、素敵な履物、なんとしまいには、てんぐちゃんの「はな」までほしくなってしまいました! さあ、「はな」をねだられた、お父さんはどんなものを用意するのでしょうか……

それにしてもお父さんのだるまどん。だるまちゃんのほしいものを一生懸命集めてきますが、結局だるまちゃんは、だるまどんに用意してもらったものでは満足せず、自分で工夫してほしいものを作るので、お父さんのがんばりが報われていないようです。
                                                                   
実はこのお父さんのモデルは作者・加古里子さんのお父様なのだそうです。子煩悩なお父様だったそうで、加古さんが小さいころに目にとめた様々なおもちゃを、すぐにお金を出して買ってくれたのだとか。でも実は、加古さんは自分で作れるかもしれないと、しくみや形を観察していただけで、実際に買ってほしいわけではなかったのです。

親が自分のことを考えてくれているというありがたさ、お金を出させてしまった気まずさ、でも欲しいものではない……という複雑な気持ちが原風景としてあるのだそうです。そんな親に対する複雑な思いを内包しながら、子どもたちは成長していくのではないかと、加古さんは記しています。(『未来のだるまちゃんへ』文藝春秋 刊より)

そんな加古さんのお父様と同じ失敗を重ねただるまどんは、結局だるまちゃんと協力して知恵をしぼり、家族総出でお気に入りを作り出します。『だるまちゃんとてんぐちゃん』を読んだ後は、身近にあるもので工夫して遊ぶ子どもたちと、じっくり向き合いながら過ごしてみませんか? 親子ならではの、楽しい遊びが生まれてくるかもしれませんよ。

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2020.06.19

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