あのねエッセイ

特別エッセイ|junaidaさん『怪物園』

2020年12月新刊『怪物園』は、字のない絵本『Michi』や、ことばとことばをつなぐ不思議な日本語「の」をテーマにした絵本『の』で、多くの読者の心を掴んできたjunaidaさんが、まったく新しい世界観で描く、不思議で美しい、怪物たちと子どもたちの物語。作品の刊行を記念してjunaidaさんが、物語が生まれた意外なきっかけや、不思議なストーリーを読み解く鍵となる「想像する力」について綴ってくださいました。ぜひ作品とあわせてお楽しみください。

KEEP IMAGINE

junaida


絵や物語の生まれるきっかけが、何かの単語や言葉だったりすることがよくあります。そういうアイデアのかけらのようなものは、頭の片隅にいくつも転がっていて、『怪物園』というタイトルも、そこからやってきました。
このタイトルは、1930年代の映画『怪物團(かいぶつだん)』を、うっかり「かいぶつえん」と読み間違えたのがもともとの始まりでした。
きっかけは勘違いだったけれど、このタイトルはなんだか面白いなあと思っているうちに、『怪物園』を舞台にした色んな物語が、頭の中で生まれては消え、掴みどころのないまま変化し続ける状態が、しばらくの間続いていました。
ところがある日、それまでは子どもたちが怪物園に行く、という大筋だったものが、怪物園が子どもたちの住む街へやって来る、という正反対のものへと変化したことが引き金となり、とつぜん頭の中のピントが定まって、一気にこの物語が浮かび上がってきました。

この絵本には、怪物たちの世界と子どもたちの世界、普段は決して交わるはずのない別々の世界が存在します。まるで異なる2つの絵本が1冊になったような、そういう物語です。しかも、この物語では現実と空想が逆転しています。本来、空想であるはずの怪物たちが現実で、子どもたちが起こすのは空想の出来事なんです。
読み進めていくうちに、何が現実で、何が空想なのか、だんだんとその境界線が曖昧になってくる感覚があるかもしれません。それこそが僕がこの絵本で描きたかったことのひとつでもありました。

僕らの暮らすこの日常のすぐ隣には、思いもかけないような非日常が存在します。そしてそこには境界線なんてないのかもしれません。
自分の理解を超えたものや、未知のものが現れたとき、考え方や主義主張の異なる、相反するものと向き合うとき、どんなときでも僕らにとって大切なのは、「想像する力」なんじゃないかなあと思うのです。そして、想像を止めないこと、想像し続けることが、僕らがこれから進んでいく先の、明るい道しるべになるような気がしています。

怪物園はどこから来てどこへ行くのか、はたまた怪物園とは一体なんだったのか、正解のようなものはありません。僕自身、この物語はこういうことかもしれない、ああかもしれないと、今でもあれこれ想像しています。
物語というのは、読者にとっても、作者にとっても、いつも何かしらの問いかけであってほしいと思っています。その問いに対して、人それぞれに、その時々に、色んな想像をしてもらえたらうれしいです。僕もずっと想像し続けます。



junaida(ジュナイダ)
1978年生まれ。画家。2010年、京都・荒神口にHedgehog Books and Galleryを立ち上げる。『HOME』(サンリード)で、ボローニャ国際絵本原画展2015入選。『Michi』(福音館書店)で、第53回造本装幀コンクール・日本書籍出版協会理事長賞(児童書・絵本部門)受賞。その他の作品に、『THE ENDLESS WITH THE BEGINNINGLESS』『LAPIS・MOTION IN THE SILENCE』(ともにHedgehog Books)、宮澤賢治の世界を描いた『IHATOVO』シリーズ(サンリード)、『の』(福音館書店)、装画・挿絵の仕事に『せなか町から、ずっと』(斉藤 倫 作/福音館書店)などがある。

2020.10.19

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