日々の絵本と読みもの

日常のなかの特別な一日『きょうはなんのひ?』



タイトルからワクワクします。お誕生日かな? 何かのお祝いの日なのかな? でも表紙は日常の穏やかな朝食の風景が描かれています。少し違うのは主人公のまみこが手紙を持っていること。

朝、まみこは登校前にお母さんに尋ねます。「おかあさん、きょうは なんのひだか、しってるの? しーらないの、しらないの、しらなきゃ かいだん 三だんめ」と言い残して出かけてしまいました。お母さんはすぐに階段にいくと、そこには赤い紐を結んだ手紙があり、「ケーキのはこを ごらんなさい」と書いてありました。

ケーキの箱にはまた赤い紐の手紙が。「つぎは げんかん かさたてのなか」。こうして、お母さんは家事もそこそこに、まみこの手紙を家中探しまわることになります。

最後の手紙はお父さんのスーツのポケットの中。「とうとう ゆうびんばこに プレゼントがとどきました。おせわさま」

お父さんが帰ってきてから、郵便受けに届いていた小包をあけると、まみこから両親への素敵な贈り物が…実は今日はお父さんとお母さんの10回目の結婚記念日だったのです! お父さん、お母さんからまみこへのサプライズもあり、日常のなかの特別な一日を描きます。

文章は、瀬田貞二さん。『かさじぞう』『三びきのやぎのがらがらどん』などたくさんの絵本や童話が世代を超えて読み継がれ、現在の日本の児童文学界に多大な功績をのこした方です。そんな瀬田貞二さんの晩年に作られた創作絵本です。実は、まみこの好きな絵本として登場する『マドレーヌといぬ』の翻訳も瀬田さんが手掛けられています。絵は『はじめてのおつかい』『こんとあき』などでおなじみの林明子さん。文章には書いていない、まみこの大切にしているもの、好きなこと、お母さんがしている家事の様子などがやさしい絵の中にたくさん描かれていて、本をよんでもらっている子どもたちは、お話をさらに深く感じることができます。

お話の最後には、お父さんとお母さんは結婚記念日を本当に知らなかったのでしょうか? と問いかけられていますが、これはぜひ絵本を読んで確かめていただきたいと思います。
お話の展開に驚いたり、描かれた絵を見て想像したり……何度も何度も楽しめる絵本です。

担当A・私の一番好きな絵本です。私自身は、両親の結婚記念日に妹と「きょうはなんのひごっこ」をしたことを思い出します。息子たちにも読みましたが、特に今年の結婚記念日には何もありませんでした…

2022.11.22

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